ITシステムで視覚的にDCを管理 |
一時期の勢いは薄れたとはいえ、国内データセンター市場は右肩上がりの成長を続けている。クラウド時代の幕開けとともに、建設需要が再来した2010年を境に都心型だけでなく、郊外型の大型案件も増え始めた。当時の建設ブームの案件が続々と完成した12年を、データセンター業界では“DCIM元年”と位置付けている。
そもそもデータセンターは建物の工事完了後に、各階フロアにラック類を配置した上でシステム機器を入れ、空調設備との調整工事を行い、ようやく運用がスタートする。建物の工事自体はゼネコンが請け負うが、引き渡し後から運用までのシステム機器工事はファシリティーベンダーや機器メーカーなどが担当する。
DICMというマネジメント手法 |
サーバーなどのシステム機器類は技術進歩が著しく、刷新のサイクルは5年ほどの短さ。事業者はデータセンターの運用管理全般を外注していることもあり、運用開始から数年後には最新システムに対応できず、エネルギー効率の最適化を実現できない状況に陥りやすい。鈴木氏は「FM(ファシリティマネジメント)とITのかい離が生じている」と解説する。
DCIMはデータセンターのエネルギー効率を最適化する概念。電源、冷却、環境監視など運用にかかわる情報をITシステムによって、統合管理するマネジメント手法でもある。運用コストは電気代が全体の3分の1程度に達し、データセンターの事業収益性を高めるにはエネルギー効率の最適化が欠かせない。
外部へのデータ出力が難しい閉ざされたシステムのデータセンターでも、運用後に統合管理に向けたシステム改善はできるが、計画時にある程度の配慮がないとコスト負担が大幅にかさんでしまう。そこで同社は建設段階からDCIMの考え方を普及させようと、設計者や施工者に説明し、受注提案の切り口として導入を呼び掛けてきた。
変化が現れたのは1年ほど前からだ。事業者側のDCIMに対する認知度が高まり、施設づくりの要件としてクローズアップされるようになったことがきっかけとなった。「ゼネコンから相談が増えているのも、オープンシステムというDCIMの概念が広まってきた裏返し」と、鈴木氏は分析している。
エネルギーマネジメントのスペシャリストとして100カ国以上で事業展開する同社は、データセンター以外に水処理や医療施設など十数分野にStruxureWarシリーズを展開中。各ソリューションには、統合管理の全体最適が根底の考え方として存在している。DCIMのニーズは既に欧州で定着し、日本を中心にアジア地域での普及が期待されている。
遠隔地からでも運用状況を把握できる |
日本市場では、DCIM対応のデータセンターが徐々に増え始め、新築だけでなく、既存ストックへの切り替え需要も高まっている。鈴木氏は「これまで日本ではDCIM導入に様子見の状況が続いていたが、ここに来て事業者の変化に合わせるように、設計者や施工者の意識も変わり始めた」と手応えを口にする。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
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