旭硝子が2年もの歳月をかけて製品化した建築向けの新ガラス『クリアサイト』は反射率0.8%を実現し、屋外使用も可能にした。ビルディングガラス部営業企画チームの中澤東一主幹は「ガラスの存在自体を消すことに成功した」と胸を張る。国内にはガラス建築が数多く誕生しているものの、反射によって周辺の景色が映り込んでしまう共通の悩みがある。「建築の新たなトレンドをつくりたい」。透明性への追求は、同社の挑戦でもある。写真は左が低反射ガラス、右が一般ガラス。カメラ撮影すると違いが一目瞭然。
建築用ガラスは、機能強化によって進化してきた。樹脂などの中間膜を挟み込んだ合わせガラスは衝撃安全性を確保し、表面に酸化スズや銀などをコーティングしたLow-E(低放射)ガラスは遮熱や断熱性を向上させた。ガラス製造メーカーはこれらを複層化することで、より高い性能を確立してきた。中澤氏は「これまでとは異なり、今回は意匠性の部分にこだわった」と強調する。
そもそもガラスの色は透明ではなく、薄いグリーンがかっている。これにはガラスの反射が深く関係している。透明と思われがちなガラスだが、周囲の景色を映し出してしまい、存在自体を消すことができなかった。映り込みの原因は光の波長にある。商品開発グループの石田光主席は「入って来る波長を反射時にずらし、出て行く波長を抑えることで、映り込みを最小化できる」と説明する。
■輸入から自社製造へ
これまで同社は輸入販売によって可視光線反射率1.0%の性能をもつガラスを提供してきたが、アルカリ性に弱く、屋外ではコーティングが劣化する課題があった。そこで同社はガラス両面に特殊コーティングを施し、光の反射を極限まで抑え、反射率0.8%を実現した。豊富な膜設計技術を生かし、耐候性や耐薬品性の高い加工にも成功。鹿島工場に素板から加工までを一貫生産する体制も整えた。
低反射ガラスの販売に乗り出したのは10数年前。輸入元を変更しながらより良い製品を提供してきた。設計者からは屋外使用を求める声が高まり、2年前から開発に乗り出した。課題であったコーティングの耐候性が確保でき、10月から正式に販売を開始し、今後は全面的に自社製造に切り替える予定だ。輸入コストを省けるメリットもあり、価格は従来品より安く抑えることが可能になった。
コーティングの調合を変更するだけで、Low-Eガラスの製造ラインをそのまま活用でき、安定した生産のめども付いた。室内に限定していた従来品はガラス厚を5mmと8mmにとどめていたが、屋外使用でのニーズをくみ取り、最大で10mm厚まで広げた。元板サイズも大開口部への採用を意識し、最大で3600mm×2800mmを提供。既に合わせガラスの対応を可能にしているが、要望が多い強化ガラスの販売検討も進めている。
■潜在的ニーズをねらう
試験販売では、予想を上回るほどの好評を得た。博物館や美術館に加え、広告媒体のデジタルサイネージへの導入ニーズもあり、新たな用途への期待も高まっている。湾岸エリアの高層マンションでは夜景の美しさを売りにしようと、先んじて導入を決めたディベロッパーもある。美術館では来館者から反射で見えにくいとのクレームが多く、ガラス自体を交換したいという要求も少なくない。
同社は「販売目標はこれまでの10倍に設定している。2015年度末には達成したい」(中澤氏)とあくまでも強気だ。低反射ガラスのマーケットは展示室やショールームなどに限定され、市場規模自体はそれほど大きくない。ただ、ガラスを多用する建築物の中には構造美を売りにするコンセプトも多く、低反射ガラスの潜在的なニーズは大いにある。反射率0.8%で屋外使用を可能にしたガラスは業界初。建築家への営業活動を本格化しようとしている。
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建築用ガラスは、機能強化によって進化してきた。樹脂などの中間膜を挟み込んだ合わせガラスは衝撃安全性を確保し、表面に酸化スズや銀などをコーティングしたLow-E(低放射)ガラスは遮熱や断熱性を向上させた。ガラス製造メーカーはこれらを複層化することで、より高い性能を確立してきた。中澤氏は「これまでとは異なり、今回は意匠性の部分にこだわった」と強調する。
左側が「クリアサイト」、右側は通常のフロートガラス |
■輸入から自社製造へ
これまで同社は輸入販売によって可視光線反射率1.0%の性能をもつガラスを提供してきたが、アルカリ性に弱く、屋外ではコーティングが劣化する課題があった。そこで同社はガラス両面に特殊コーティングを施し、光の反射を極限まで抑え、反射率0.8%を実現した。豊富な膜設計技術を生かし、耐候性や耐薬品性の高い加工にも成功。鹿島工場に素板から加工までを一貫生産する体制も整えた。
低反射ガラスの販売に乗り出したのは10数年前。輸入元を変更しながらより良い製品を提供してきた。設計者からは屋外使用を求める声が高まり、2年前から開発に乗り出した。課題であったコーティングの耐候性が確保でき、10月から正式に販売を開始し、今後は全面的に自社製造に切り替える予定だ。輸入コストを省けるメリットもあり、価格は従来品より安く抑えることが可能になった。
コーティングの調合を変更するだけで、Low-Eガラスの製造ラインをそのまま活用でき、安定した生産のめども付いた。室内に限定していた従来品はガラス厚を5mmと8mmにとどめていたが、屋外使用でのニーズをくみ取り、最大で10mm厚まで広げた。元板サイズも大開口部への採用を意識し、最大で3600mm×2800mmを提供。既に合わせガラスの対応を可能にしているが、要望が多い強化ガラスの販売検討も進めている。
■潜在的ニーズをねらう
試験販売では、予想を上回るほどの好評を得た。博物館や美術館に加え、広告媒体のデジタルサイネージへの導入ニーズもあり、新たな用途への期待も高まっている。湾岸エリアの高層マンションでは夜景の美しさを売りにしようと、先んじて導入を決めたディベロッパーもある。美術館では来館者から反射で見えにくいとのクレームが多く、ガラス自体を交換したいという要求も少なくない。
同社は「販売目標はこれまでの10倍に設定している。2015年度末には達成したい」(中澤氏)とあくまでも強気だ。低反射ガラスのマーケットは展示室やショールームなどに限定され、市場規模自体はそれほど大きくない。ただ、ガラスを多用する建築物の中には構造美を売りにするコンセプトも多く、低反射ガラスの潜在的なニーズは大いにある。反射率0.8%で屋外使用を可能にしたガラスは業界初。建築家への営業活動を本格化しようとしている。
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