2014/11/30

【素材NOW】新たな天井下地材登場! 軽さと加工の容易さに熱視線 三菱樹脂


石膏ボードに代わる新たな天井下地材として、三菱樹脂が軽量不燃発泡複合板を開発した。ポリウレタン樹脂の原液を提供する中で「自らが完成品を販売する用途転換の一環」と、小林正英理事複合材事業部長は強調する。来春の販売に向け準備中だが、天井耐震化対策を完了した東京都港区の建築会館ホールに初採用され、発売前から多くの問い合わせが舞い込む。石膏ボードの8分の1という軽量特性に注目が集まっている。
 同社が用途転換事業に力を入れ始めたのは3年前。天井落下被害が深刻化した東日本大震災を背景に、具体的な検討が始まった。そもそもウレタン樹脂はイソシアネートとポリオールを原料に、その化学反応によって形成される。同社は原液販売を主体に活動しているが、自らがウレタン樹脂を面材や建材に加工販売する用途転換の取り組みも並行して進めてきた。小林事業部長は「まだ全体の1割に過ぎないが、徐々に用途転換比率を上げたい」と説明する。

用途転換事例の1つ、トラック車体向けパネル
例えば輸送トラックの荷台を覆う複合パネルは、成功した用途転換事例の1つ。ポリエチレンを使った芯材の両面に、建築材料として世界130カ国以上に使われている同社のアルミ樹脂複合板『アルポリック』を貼り合わせたもので、木材繊維板にアルミを貼り合わせた従来品に比べ、軽量で腐食もしない特性が評価されている。
 今回開発した軽量不燃発泡複合板は、ウレタン樹脂の両面にアルミ箔を貼った3層構造。原液の販売先ではアルミ金属を貼り合わせた加工品を提供する動きはあるものの、アルミ箔を使った加工商品はない。国土交通省の不燃認定も取得し、石膏ボードに代わる不燃材としての道筋が整った。
 建築会館ホールの天井下地に採用された際には、厚さ20mmの芯材が使われ、面材には意匠面に80ミクロン、裏面に40ミクロンのアルミ箔が貼られた。重量は1㎡当たり1.0㎏。意匠材である厚さ15mmのリブ付岩綿吸音板を合わせても5.8㎏にとどめることができた。改修前は厚さ9.5mmの石膏ボードが使われ、重量は7.2㎏だった。
 複合材事業部ウレタングループの岡田正浩グループマネジャーは「軽さだけでなく、施工性、さらには現場への搬入時にも利点がある」と強調する。施工時には作業員がカッターナイフで切り分けでき、軽量であるために搬入もスムーズだ。欠点は「価格」だが、「軽さや安全性が付加価値になり、トータルで考えれば、石膏ボードに代わる天井下地材として十分に競争力はある」と胸を張る。

天井耐震対策後の建築会館ホール
建築会館ホールの天井対策工事は、設計を秋元和雄設計事務所と構造計画プラス・ワン、施工を清水建設、天井下地を桐井製作所が担当した。建物鉄骨に天井下地を直張りする方法が採用され、万が一の落下防止に備え、天井下地をスチールテープでつり上げる対策も施された。
 日本建築学会がまとめた工事報告書によると、断熱性能は石膏ボードの約10倍、防湿性能は表面のアルミ箔によって水蒸気の透湿がほぼ皆無という結果も得られた。岡田グループマネジャーは「軽量であるが、素材自体は硬質であり、化粧板取り付けの検証もクリアしていることが、今後の採用に向けた競争力になるだろう」と付け加える。
 初採用の実績を聞きつけたゼネコンや設計事務所などからの問い合わせは絶えない。2件目の採用も最終調整を迎え、既に発売前から反響は大きい。原材料指標のナフサ価格は安定し、入手しやすい状況が続いている。小林事業部長は「非常に良いタイミングで上市を迎えられる。石膏ボードの利用範囲は広いだけに、天井仕上材以外の使い方にも可能性はある」と、その先をしっかりと見据えている。
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