「ダンサーを中心に各国の表現者と純粋な創作活動ができたぜいたくな時間でした。日本の美意識を伝えつつ異文化を柔軟に受け入れる表現を発見することができ、本当に感謝しています。これからも他国との交流をさらに進化させていければと思います」
ことし4月にはオランダで、これまでまったく体験したことのない奇跡ともいえる音空間に遭遇した。それはアムステルダム中心街にある450年ほど前につくられた「旧教会」でのコンサート。レナードさんの和太鼓とパイプオルガンが共演し、「天と地の遭遇」の物語をお互いが奏で、大成功を収めた。
内部には荘厳なパイプオルガンが設置されている(photo:Asami Uchida) |
パイプオルガンは歴史的なもので、今と違って奏者が見えないつくりになっている。
「お互いにアイコンタクトが取れず、耳だけを頼りにした即興演奏になりました。目からの情報が失われた時の集中力が試されたわけですが、音楽家に本来求められる身体感覚のような気がします。音楽のあり方としてはとても美しいと思いました」
太鼓は古くから神との交信の手段として知られている。
「これまでの演奏の中で、最も神に近付いた瞬間だと思いました」
この教会の床は石造の墓になっていて、オランダの偉人も眠っている。
「太鼓は霊を呼び起こす力を持っています。コンサートでいろいろな人が目を覚まされていたのではないでしょうか。もう少し叩いていたら石が動いていたかもしれませんね(笑)」
神経を研ぎ澄ました創作活動の合間には、いくつかのホッとするシーンがあった。インドでは、宿泊先のホテルの前に観光用のラクダの乗り場があって、さっそく体験。
文化交流使としてインドに入った時のホッとしたひととき |
父親は宮城道雄に師事した著名な箏曲家、衛藤公雄氏。幼少のころに失明し箏(こと)一筋で生きてきた人だ。1953年から約10年、米国で活躍。当時としては画期的だったカーネギーホールでの公演も果たしている。レナードさんは、父の渡米中のニューヨークで生まれた。
母・美重子さんに抱かれているのがレナードさん。左が父・公雄さん、その右隣が兄でパーカッショニストのスティーブエトウさん(ニューヨークの写真スタジオで) |
演奏中のレナードさん |
今後の活動として、14年12月には再び渡欧。南仏でダンス作品のための創作に入る。15年1月22日(木)、23日(金)には南青山マンダラにて1年半ぶりに日本でライブを行う。問い合わせ・南青山マンダラ・03-5474-0411。
オフィシャルサイトはhttp://leoeto.com。文化交流使の記録動画も収められている。
【建築ファイル】
中性の面影を残す美しい外観 |
「Oude Kerk」は英語ではオールド・チャーチで、文字どおり古い教会の意味。オランダ・アムステルダムの中心街にある1565年建立の歴史的建築だ。もともとは、地元漁師たちが13世紀、この場所に船乗りの守護神である聖ニコラスに捧げる礼拝所を建てたのが始まり。アムステルダムで最も古く、最も美しい建物といわれる。
内部は木造で、本体のドーム部分は高さ約20mの高さを持つ。ヨーロッパの教会で最大級の木造天井として知られる。内部奥には荘厳なパイプオルガンが設置されている。日常的には礼拝に使われているが、木質空間の音響の素晴らしさから、演奏会場としても国内外の音楽家の高い評価を受けている。
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