日本建築家協会東北支部(JIA東北、辺見美津男支部長)は8日、福島市の福島県教育会館でJIA東北支部建築家大会「あとから来る者のために」を開いた。建築家の内藤廣氏=写真=が「3月11日以降」と題して基調講演したほか、パネルディスカッションでは前日に視察した全町避難が続く警戒区域の双葉町と富岡町の現状を踏まえて、福島の再生と復興に向け、建築家の使命と役割を模索した。
基調講演では内藤氏が「多くの関係者がまじめに復興事業に取り組んでいるものの、思うような形になっていない」と現状を指摘。こうした事態を引き起こした要因を「私権を重視するのは簡単だが、もう一方の公の福祉という概念が戦後一貫して議論されなかったためだ」と国土交通六法と民法、憲法まで踏み込んだ議論の必要性を訴えた。
現在も岩手県を中心に多くの復興関係委員会に参加し、さまざまなアイデアを提案しているが、「一度回り出した歯車を止めるのは難しく、採用される確率は1勝9敗くらい。ほとんどが負け戦だ」とし、動き出した事業を見直すことの難しさを強調。その上で、「規定のルールを越えてより良くするためには、基礎自治体のガバナンスや首長のリーダーシップのもとグレーゾーンに踏み出す勇気を持ってほしい」と訴えた。
一方、被災地の復興関係委員会のメンバーに建築家が招へいされない現状を指摘し、「設計業務を越えて地域に貢献し、文化を創出しようとする建築家が、自治体のブレーンとして呼ばれる社会をつくることが必要だ。復興はこうした状況を逆転するチャンスだ」と、会場に詰め掛けた建築家らに呼び掛けた。
続いて辺見支部長がコーディネーターを務めたパネルディスカッションには、内藤氏と富岡町まちづくり検討委員の浦部智義日大准教授、阿部直人JIA福島地域会長、フクシマトクシマの会を設立し、JIA福島の取り組みを参考に東南海沖地震に備える活動を展開している内野輝明氏(JIA徳島)が参加した。
震災後、初めて福島の被災地を訪れたという内藤氏は「原発事故関連はすぐに解決できる問題ではない。建築家にも新たな体内時計が必要だ」と、長期的な取り組みの必要性を指摘した。さらに視察した双葉町の帰還希望者がわずか1割という現状を踏まえ、「希望となるイメージを見せれば1割が3割になるかもしれない。みんなが信じられる夢を描くのが建築家だ」と職能としての役割を示した。
原発避難者のための災害公営住宅を設計している阿部氏は「応急仮設住宅の次の住まいとなる災害公営住宅でも同じような生活を繰り返すことに疑問を感じる。長期避難者がどこにどう住むのかという本質的な議論がないままだ」と福島の現状と課題を指摘した。
これを受けて浦部氏は、避難先と元の地域にそれぞれ拠点を置く2地域居住の概念を紹介し、「それぞれの地域で生活する比率を自ら決められる仕組みが必要ではないか」と、避難者向けの多様な選択肢の必要性を提示した。
辺見氏は「新たな暮らしがある一方、心のふるさともある。住民を巻き込んだ議論を展開し、避難者の心を支えるという福島発の概念に取り組みたい」と避難者の気持ちに寄り添う取り組みに意欲を示した。
内藤氏は「外部の人間でも議論の種をまくことはできる。アイデアであればいくら言ってもいいのではないか」と被災者や避難者間の議論の土台を建築家が打ち出していく姿勢を求め、内野氏も「アイデアを出し合える環境をつくることが重要だ」と同調した。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら
基調講演では内藤氏が「多くの関係者がまじめに復興事業に取り組んでいるものの、思うような形になっていない」と現状を指摘。こうした事態を引き起こした要因を「私権を重視するのは簡単だが、もう一方の公の福祉という概念が戦後一貫して議論されなかったためだ」と国土交通六法と民法、憲法まで踏み込んだ議論の必要性を訴えた。
現在も岩手県を中心に多くの復興関係委員会に参加し、さまざまなアイデアを提案しているが、「一度回り出した歯車を止めるのは難しく、採用される確率は1勝9敗くらい。ほとんどが負け戦だ」とし、動き出した事業を見直すことの難しさを強調。その上で、「規定のルールを越えてより良くするためには、基礎自治体のガバナンスや首長のリーダーシップのもとグレーゾーンに踏み出す勇気を持ってほしい」と訴えた。
一方、被災地の復興関係委員会のメンバーに建築家が招へいされない現状を指摘し、「設計業務を越えて地域に貢献し、文化を創出しようとする建築家が、自治体のブレーンとして呼ばれる社会をつくることが必要だ。復興はこうした状況を逆転するチャンスだ」と、会場に詰め掛けた建築家らに呼び掛けた。
辺見美津男支部長 |
震災後、初めて福島の被災地を訪れたという内藤氏は「原発事故関連はすぐに解決できる問題ではない。建築家にも新たな体内時計が必要だ」と、長期的な取り組みの必要性を指摘した。さらに視察した双葉町の帰還希望者がわずか1割という現状を踏まえ、「希望となるイメージを見せれば1割が3割になるかもしれない。みんなが信じられる夢を描くのが建築家だ」と職能としての役割を示した。
原発避難者のための災害公営住宅を設計している阿部氏は「応急仮設住宅の次の住まいとなる災害公営住宅でも同じような生活を繰り返すことに疑問を感じる。長期避難者がどこにどう住むのかという本質的な議論がないままだ」と福島の現状と課題を指摘した。
パネルディスカッション |
辺見氏は「新たな暮らしがある一方、心のふるさともある。住民を巻き込んだ議論を展開し、避難者の心を支えるという福島発の概念に取り組みたい」と避難者の気持ちに寄り添う取り組みに意欲を示した。
内藤氏は「外部の人間でも議論の種をまくことはできる。アイデアであればいくら言ってもいいのではないか」と被災者や避難者間の議論の土台を建築家が打ち出していく姿勢を求め、内野氏も「アイデアを出し合える環境をつくることが重要だ」と同調した。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら
0 コメント :
コメントを投稿