2014/11/24

【現場最前線】安全・効率を堅持! 巨大仮橋から上下部工一体施工 新名神 坊川第三橋工事

大成建設が上下部工一体の施工を担当する「新名神高速道路 坊川第三橋工事」では地上に作業ヤードが確保できないため、施工区域全域に構築した長さ約800m、広さ約9800㎡の巨大仮橋上からさまざまな作業が進められている。最高高さ約40mでの高所作業、狭い作業スペースに、他工区の排出土運搬ルートにも併用されている仮橋上を1日約200台のダンプが往復するという特殊条件が加わる。厳しい条件下で基礎、下部、上部工事が同時進行し、最盛期を迎える現場で陣頭指揮を執る同工事作業所の西川伸之所長は、「ジャスト・イン・タイム」(JIT)による効率施工と、綿密な安全管理を高次元で融合させながら、急峻な山間で高品質な橋づくりに挑んでいる。

 西日本高速道路(NEXCO西日本)関西支社発注の同工事は、兵庫県宝塚市切畑~同玉瀬間に長さ652mのPRC7径間連続ラーメン箱桁橋(上り線)、629mの同6径間連続箱桁橋(下り線)を築造する。新名神高速道路高槻第一ジャンクション(JCT)~神戸JCT間40.5㎞で大成建設が受注している6工区の中でも、施工難易度が高い工事の1つだ。
 西川所長が「施工区間全域にこれほど大規模な仮橋を採用しているのは非常に稀」と話す現場は、作業ヤードが狭く、資機材を長時間置いておけないため、「常に作業に必要な資材を搬入して使い切るという工程上の工夫が求められる」という。

橋脚工事では、帯筋、せん断補強筋をあらかじめ地組みして効率化を図る
橋脚工事では、帯筋、せん断補強筋を作業ヤードであらかじめ地組みしてクレーンで一括建て込みする工法を取り入れ、施工効率と精度を高めている。また、橋脚ごとに異なる脚頭部の躯体形状に勾配を合わせて型枠・支保工をセットできるシステム足場を導入し、効率化につなげている。
 仮橋は2012年9月に着工し、ことし5月に全体完成した。川西インターチェンジ(IC)方向から順次構築し、神戸JCT方面に延伸しながら上下線の橋脚基礎工事、本体工事を進めるという流れだ。当初は本工事の作業用にだけ使う計画だったが、周辺工事用道路の施工遅延を受け、ダンプの通行帯を確保して拡張し、他工区で発生した排出土を盛土材として(仮称)宝塚サービスエリアへ運搬するための機能を付加した。
 「ダンプが頻繁に通過する中で、生コンクリート車や資材運搬用のトレーラーも通行させなければならない」(西川所長)ため、安全管理には細心の注意を払う。「週1回の調整会議で、他工区の施工者とダンプ通過台数や生コン車の搬入などを打ち合わせている」ほか、ダンプとの接触やクレーンで吊った資材下への侵入を防ぐための注意喚起、指差呼称を徹底している。
 計11基の橋脚工事には、ロックボルトと吹付コンクリートで地山を補強しながら垂直に掘り下げる「竹割り型土留め工」を採用。「必用最低限の掘削で済み、排出土量を抑制できる」(西川所長)ため、環境にやさしい。
 10月中旬時点で11基中10基の橋脚工事に着手しており、うち4基は上部工が始まっている。上部工には、片持ち張出し架設工法を採用。上りのP2は、11月末から移動式作業車を柱頭部に設置し、14年内には箱桁の張出しが始まる予定だ。張出し長さが両側それぞれ約80mで最長となる下りP1は、現役の地下導水路が近接し、スパンを稼ぐ必要があるため、軽量の波形鋼板ウェブを採用する。
 西川所長にとって橋の現場は今回が8件目だが、上下部工一体工事に着工時から携わるのは初めて。最盛期の現場では約100人の作業員が働く。「自分が預かる職員、作業員には絶対に事故を起こさせない」という強い決意で、16年2月までを予定している工期を「無事故、無災害で終えたい」と気を引き締める。
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