2014/11/02

【コンテンツ】コンピューターが広げるものづくりの発想 舘知宏助教×田川欣哉代表

ものづくりの発想を豊かで柔軟にするヒントは、コンピューターの活用にある--。23日に東京都内で開かれた対談『コンピュテーショナル・ジオメトリ×デザイン・エンジニアリング』で、コーディネーターを務めた建築家の池田靖史慶大大学院教授は、2人の話をそうまとめた。1人は東大大学院の舘知宏助教、もう1人はタクラム・デザイン・エンジニアリングの田川欣哉代表だ。画像は、1枚のシートから作られた多面体。

舘知宏助教(東大大学院)
舘助教は、アルゴリズムに基づく折り紙の設計手法と応用、つまり「1枚のシートを切らずに折るだけであらゆる多面体を作る」手法を研究している。鞍型を1枚のシートを曲げて作ることはできないが、折り目を入れてシワシワにすれば近似の形を作れる。折り紙は、折りたたんで運び、所定の場所で「材料や機械や(再度の)設計がなくてもまるで遺伝子を内包しているように形ができる」のが特徴。宇宙規模から人体にまであらゆるシーンに活用されている。剛体にすることで建築のような大きなスケールも実現可能であり、可変性のある空間を造れる。その計算や微調整にはコンピューターが欠かせない。

田川欣哉代表(タクラム・デザイン・エンジニアリング)
一方の田川代表は、スマートフォンの名刺管理アプリ『eight』や福島の子ども向けホールボディカウンターなどのユーザーインターフェースをデザインしている。建築家の伊東豊雄氏と協働したインスタレーションでは、センサー付き照明が人を感知して光の波紋を伝播する空間をデザインした。出身は機械工学のエンジニア。デザインとエンジニアリングという2つの職能を1人の人間が高度に発揮し、振り子のように発想を極端に行き来させている。それは「コンピューターによって1人が発信できるものの量が上がってきている」ためだという。タクラム・デザイン・エンジニアリングでは、こうした「幅の広い人間」が集まり、プロジェクト中に役割分担を変え、最適化しながらチームワークを発揮する。
 2人に対して池田教授は、「発想をどのように広げているのか」と質問。舘助教は「理論が頭に入っていると、紙や布でできた形を触っている時に、それが幾何学を内包していることが見えてくる」などの経験を披露。田川代表は「専門家は視点にバイアスがかかっているため専門外の人材に担当させると非効率だが発想のメカニズムが変わる。基礎研究も素人的に見たときの驚きが応用につながる」と持論を展開した。
 この対談は、建築分野におけるコンピュテーション活用などの最新動向を紹介するイベント「Archi Future 2014」の一環として、建築以外のフィールドでも活躍する2人の最新のデザインプロセスからヒントを得るために企画された。

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