2012/10/11

岩手県沿岸部初の復興集合住宅 独自工法で工期半減

公営住宅の完成予想
岩手県沿岸部で、新設集合住宅としては初弾となる災害復興公営住宅の建設が動き出した。新日鉄住金が所有する土地に、新日鉄興和不動産が3期に分けて計210戸の集合住宅を建設するもので、完成後は地元の釜石市が土地と建物を買い取るスキームだ。現地では10日に1期整備の地鎮祭が行われた。

新日鉄住金が保有地活用の提案を釜石市に打診したのは2011年7月。市内には製鉄所のほか、賃貸アパートやグラウンドなどに活用している保有地が複数あり、1500戸の復興住宅建設を計画していた市側のニーズと合致した。
 建設地は上中島町4丁目に保有するテニスコートの敷地3745㎡(1期整備)と、同2丁目で運営している賃貸アパートの敷地1万4455㎡(2・3期整備)の2カ所。1期分には54戸、2・3期分では156戸の住戸を計画、全体で住戸数210戸の集合住宅を提供する予定だ。
 注目されるのは、住戸数54戸の1期計画となる3階建て延べ3500㎡規模の施設を、約5カ月の工期で仕上げる点だ。被災地域では復興集合住宅の建設がようやく動き出したものの、コンクリートなどの資材や技能者の不足が懸念されている。
◇新工法で工期短縮

 集合住宅の大半はRC造で計画されているが、ここでは構造躯体に新日鉄住金が独自開発した薄板軽量形鋼造「NSスーパーフレーム工法」を採用することで、大幅な工期短縮を実現する。
 同工法は、亜鉛めっきを施した厚さ1-2mm程度の薄板軽量形鋼を使い、木質・セラミック系の面材と組み合わせたハイブリッドな枠組壁の構造。RC造集合住宅に比べ最大で2分の1という大幅な工期短縮が実現でき、近年は関東を中心に年間4000戸(約700棟)を建設している。被災地域では、日鉄物流釜石が被災社員の入居を目的に整備した社宅(18戸)に初採用、ことし3月に竣工した。
 1期と2・3期の敷地に挟まれた新日鉄住金所有のグラウンドには、180の仮設住宅が建設されており、復興住宅完成後には被災者が移り住むことになる。グラウンドの活用も今後、釜石市と協議する予定だ。市は1期の建物購入費用(土地代除く)として10億円を予算化しているという。
 10日の地鎮祭には、野田武則釜石市長ら市関係者とともに、新日鉄住金グループからは正賀晃新日鉄興和不動産取締役相談役、安藤豊新日鉄住金釜石製鉄所所長、また施工を担当する太平工業・太平工業釜石JVや、上中島町地区の復興プランづくりに協力している日本設計などの関係者も参加した。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年10月11日6面

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