BIMはコラボレーションを促進する強力なツールである。協力体制の基本は、発注者-設計者-施工者の契約方式で規定されるが、これを英語では情報を受け渡し(delivery)してプロジェクトを進めていくという行為に着目し、プロジェクトデリバリー手法と呼ぶ。日本では設計・施工分離方式が公共工事でもっぱら採用されているが、米国では主に4つの方式が使い分けられている。
古くからある設計・施工分離方式の特徴は、設計者と施工者の役割が明確に分離され、利益相反により発注者が不利益を被らないところにある。しかし、これは諸刃の剣でもあり、技術が高度化した現代では、施工を熟知しない設計により、施工段階で変更を要する事態が発生しやすく、米国では設計変更の手続きが終了するまで施工者は関連工事を進めることはできないため、工期が長引きやすい。
その弱点を解決するのがCMc(Constructor Manager as Constructor)方式である。設計段階で選定されたCMcは、設計者に施工のノウハウを提供し、その後、施工も担う。工事内訳やCMcの利益、予備費などすべての費用はオープンブックで透明化される。工事費が予備費を超過すればCMcの負担となるが、余れば発注者とCMcで折半される。発注者は予算超過のリスクを回避でき、CMcはコスト低減により、自社の利益を上げることができる。
設計と施工のすべてを一括して発注するのがデザインビルド方式である。リスクはデザインビルダーに一本化されるため、デザインとコストのコントロールもデザインビルダーの役割となる。そのため、発注者は設計が始まるとデザインに細かく指示はできず、要求事項を明確にした上で発注しなければならない。
デザインクオリティの追求とリスク回避を両立される方式がデザインビルド・ブリッジング方式である。ファサードやエントランスなど審美性が重要な部分の設計はデザイン能力の優れた設計者に任せ、残る設計と施工は別に契約したデザインビルダーにゆだねる。リスクはデザインビルダーがすべてを担う。
これらの手法はプロジェクトの予算、工期に対するリスク許容度、デザインクオリティの必要性を考慮して使い分けられる。予算や工期に余裕がある場合は設計・施工分離方式、デザインクオリティとコストのバランスをとる場合はCMc方式、機能優先の場合はデザインビルド方式である。デザインビルド・ブリッジング方式はいいとこ取りであるが、契約手続きの複雑さからか公共発注機関以外では普及していない。非住宅建築を見てみれば、かつては設計・施工分離方式が主流であったが、リスク回避のために徐々にデザインビルド方式に取って代わられつつある。
次回は、設計と施工の協力体制を強力に推進するBIM時代の新たなプロジェクトデリバリー手法として注目されているIPD(Integrated Project Delivery)方式について紹介する。
内閣府沖縄総合事務局開発建設部営繕課長 大槻泰士
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年10月10日10面
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