2012/10/04

仕事が楽しくなるオフィスを徹底探求! 京都工芸繊維大学ら

NEOウイーク2012の様子
住宅や病院、学校など建築計画学の対象となる施設は多いが、オフィスや商店建築は最近まで計画学の対象となってこなかった。新世代ワークプレイス研究センター(NEO)では、オフィスの建築計画に、コミュニケーションや生産性、さらには心理学までを取り入れる試みを進めている。センター長の仲隆介京都工芸繊維大教授に、次世代ワークプレイスについての取り組みを聞いた。
 NEOの活動はことしで6年目。仲教授は「これまでオフィスの建築計画は、働ければいいという考え方が主体だった。一方で、職場の生産性を向上させるためには、働く人同士のコミュニケーションや、ナレッジマネジメント、ICTも不可欠だ。このままでいいのか、と感じたさまざまな分野の人たちでNEOを立ち上げた」という。

◇建築以外の人も参加

仲教授
NEOメンバーには、京都工芸繊維大、熊本大、慶応大、多摩大、東工大などの大学のほか、NTTファシリティーズ、コクヨファニチャー、イトーキ、岡村製作所などの建築関連会社、ゼネコンの大林組、竹中工務店に加え、富士ゼロックス、キヤノン、NECネッツエスアイといったIT関連企業も参加している。
 NEOでは5年間を通して、オフィス空間のあり方をユーザー、経営、デザイン、社会科学など多角的な目で分析、「働く環境とは?」「仕事自体が面白くなるオフィスとは?」などについて研究してきた。
 仲教授は「スペースデザインだけではなく、遊びがあり、出会いがあり、学び、創造性などがあってもよい。内装や什器のような固定概念を超えた、新しい世代のワークプレイスを探求したい」と話す。

◇NEOウイーク2012

 9月26日。東京・芝浦のシバウラハウスで、センターの成果発表会も兼ねた「NEO WEEK2012」が開かれた。
 会場は5階建てビルの大半を借り切り、1階ロビーでは近所の主婦が料理人から豚肉のソテーの作り方を教わったり、その後方では、イベントに関する打ち合わせが、さらに後方では巨大展示が行われている。あえて“境界"を取り払った。
 さらに5階のホールでは、見知らぬ同士の人たちがグループを作って、協働をテーマにワークショップを開く。4日間にわたって繰り広げられるNEOウイークでは、こうした一見雑多なコンテンツで人々のコミュニケーションを探求した。
 「今回のNEOウイークは、1つの実験でもある」と仲教授はいう。世の中では、会社や学校、地域など多様多種の組織がそれぞれの枠の内外で活動している。それぞれの組織間には境界があり、そうした境界の中で人々は活動してきた。
 「組織、概念、専門分野といった境界を融合させ、分野をつなぐ人々を活性化させるという研究」(仲教授)が今回のウイークのテーマだ。
 例えば初日のワークショップは、電機メーカーのデザイナー、大学院生、家具メーカーの設計者らが持ち寄った特技や趣味、技能を最大限に使って「誰でも来たくなる集会所」のフィージビリティースタディーを展開した。
 わずか20分という時間内に立案し、付せん紙と模造紙でプレゼンテーション案を作成する。相手の素性も分からない中で、参加した4グループは最終発表までこぎ着けた。立場や組織という“境界"を超えた瞬間でもある。参加者は口々に「新しい体験をさせてもらった」と話す。
 NEOの「働ければいい」という無機質なオフィス環境を、人々が有機的につながっていける新たな環境に変える取り組みは続く。
 センターの概要は、以下のHPで知ることができる。http://www.neo-rc.com
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年10月4日 12面

『知的創造とワークプレイス』 AmazonLink

Related Posts:

  • 【新国立競技場】槇文彦氏が文科相に計画見直しを要望 建築家の槇文彦氏は7日、下村博文文部科学相・東京オリンピック・パラリンピック担当相あての「新国立競技場に関する要望書」を、文部科学省スポーツ・青少年局の白間竜一郎スポーツ・青少年企画課長に手渡した。要望書は、競技場の現行計画が進行した場合、都市景観上や安全上、維持管理費用の3つの懸念があると指摘。外苑の森の新競技場が将来世代から称賛されるよう、▽外苑の環境と調和する施設規模と形態▽成熟時代にふさわしい計画内容▽計画内容の詳細を公表する説明責任… Read More
  • 【国立競技場】周辺整備の一部を都が費用負担 下村文科相 下村博文文部科学相(五輪担当相)は8日の閣議後記者会見で、2020年東京五輪のメーン会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の建設費について、「(東京都の)猪瀬(直樹)知事との話し合いで、都に周辺部分(の整備)を中心に一部負担をお願いし、了承を得た」と述べた。 一方、猪瀬知事も同日会見し、「競技場本体の建設費は負担しない」とした上で、周辺整備の費用負担については第三者機関での設計内容の精査を前提に国との協議に応じる考えを示した。また新国立競技場… Read More
  • 【建築】「負けた作品も掲載」 佐藤総合計画が新建築10月別冊で特集 新建築10月別冊の『佐藤総合計画-コンペ・プロポーザルで時代に提案する』が話題を呼んでいる。1952年の日本銀行金沢支店のコンペから海外作品の深●(土へんに川)湾体育館まで、建築の戦後史を彩る佐藤総合計画の諸作品の中から50点以上をセレクトして掲載、コンペ・プロポーザルを制した作品だけでなく、新国立競技場など落選した作品も掲載しているのが特徴。  細田雅春社長は「勝つためには、負けることも重要。負けると勝ちが見えてくる。次につなげるために負け… Read More
  • 【建築】新居千秋に決定 美濃加茂市の加茂野交流センター基本設計 岐阜県美濃加茂市は、加茂野交流センター建設基本設計業務委託の公募型プロポーザルを実施し、新居千秋都市建築設計を最優先候補者に特定した。12日に審査委員会による第2次審査を実施し、5者によるプレゼンテーションとヒアリングを行い、同者を最優先候補者に選定した。その他の提案事業者は、宗本晋作建築設計事務所、山田建築事務所、都市造形研究所、ティーハウス建築設計事務所。  施設規模は約1200㎡を想定。委託料は800万円(税込み)以内。委託期間は201… Read More
  • 【新国立競技場】「将来にツケを回さない計画を」 槇氏らが見直し要望で会見 新国立競技場の建設計画をめぐり、建築家の槇文彦氏を代表者とする有志が、下村博文文部科学相と猪瀬直樹東京都知事、河野一郎日本スポーツ振興センター理事長あてに再考を求める要望書を提出した。7日に文部科学省で会見した槇氏らは、景観、安全、維持管理などから現行計画に疑問を示し、「計画の最終決定までの中で、キーパーソンとなる方にいろいろなことを考える機会にしてほしいという思いもあって要望書を出した。将来にツケを回さない計画にしてほしい」と訴えた。  要… Read More

0 コメント :

コメントを投稿