2012/10/11

隈研吾氏が講演 バルバラ・カポキン建築ビエンナーレ

イタリア・パドヴァ市で隔年開催している「バルバラ・カポキン国際建築ビエンナーレ」の第2回日本巡回展が、東京都千代田区のイタリア文化会館で開かれた。最終日の3日に行われた「地方から発信する建築」をテーマにしたシンポジウムでは、若手建築家が地域と建築の関係や地域性の考え方などを通じ、地方から生まれる新しい建築の可能性を提示した=写真。
 建築賞と建築展の2本柱で構成する同ビエンナーレは、地域性に重点を置いていることが特徴で、これまでに5回開催している。

講演する隈氏
過去の建築展に参加した隈研吾氏は、開催地のパドヴァ市を「ベネチアとは違った濃密なイタリア文明の中心」と評し、土地柄と場所性が建築賞の性格に結びついているとした。また、3.11を経て自然に対する技術の限界が露呈したことを踏まえ「自然をリスペクトし、その場所に合った建築をつくることが重要となる。カポキンは、普遍主義に変わり地域主義が来ることが分かっていたのではないか。世界の転換を予測するイベントだ」と、時代を先取りしたビエンナーレのコンセプトを評価した。
 若手建築家によるパネルディスカッションでは、11年度に「島キッチン」(香川県豊島)で建築ディテール特別賞を受賞した安部良氏が、日本の中の地域性について「駅前の風景は日本中どこも同じ。その中で地域性を出していくことが大きなテーマ。地域性は人の中に根付いており、生活者の個性を取り込んだ住宅が地域性につながる」と述べ、そこに住む人の記憶、歴史を掘り返すことで自然に地域性が出てくるとした。
 前田圭介氏は「地域に住む人からヒントを得ている。職人とふれあうことで地域が感じられ、学ぶことが多い」と、安部氏と同様に人の中に地域性を見出していることを紹介した。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年10月11日10面



Related Posts:

  • 【竹中工務店】自然物を構造デザインに…ティラノサウルスだ! 恐竜の力学特性生かし高評価 ティラノサウルスの力学特性を取り入れた新しい建築構造を提案する--。そんな思いを込めた取り組みが2014年度日本建築学会技術部門設計競技で最優秀賞を獲得した。前傾させた胴体と巨大な尾を2本の脚で支えるティラノサウルスを樹形状の柱として読み解いた提案は、新たな構造デザインとして高い評価を受けた。なぜティラノサウルスを現代に蘇らせたか。受賞した竹中工務店東京本店設計部構造部門構造9グループ課長の望月英二さんらに「Tyranno Structur… Read More
  • 【JIA新人賞】「光」を演出し「境界」生み出した古民家リノベーション 豊島横尾館 瀬戸内海に浮かぶ豊島に建てられた美術館「豊島横尾館」がJIA新人賞を受賞した。集落にあった古民家3棟をリノベーションし、アーティスト横尾忠則氏の作品を展示する。設計した永山祐子氏(永山祐子建築設計)は、「横尾作品に通底するテーマである『生と死』に着目し、その境界となる美術館を目指した」と振り返る。アートと建築の新たな可能性を探ったその設計について永山氏に聞いた。写真は横尾氏の作品が並ぶ中庭(photo:表恒匡氏)。  「豊島横尾館」で… Read More
  • 【建築九州賞】住宅部門は「かざぐるまの家」、特別賞に「SIRASU」 JIA九州 日本建築学会九州支部(河野昭彦支部長)は、2014年度第8回建築九州賞(作品賞)の選考結果を公表した。住宅部門は「かざぐるまの家」=写真=(設計=九州大学・NKSアーキテクツ)、一般建築部門は「北九州市立戸畑図書館」(設計=青木茂建築工房)と「沖縄科学技術大学院大学」(設計=日建設計)が輝いた。JIA特別賞にはSIRASU(設計=ARAY Architecture)を選考した。5月23日の支部通常総会で表彰する。  建築九州賞は九州地方の建… Read More
  • 【ASJ】「『建築家の自慢の写真』展~都市・建築・建築家~」2月28日まで 横浜 アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)は、横浜ランドマークタワー31階「ASJ YOKOHAMA CELL」で、28日まで「『建築家の自慢の写真』展~都市・建築・建築家~」を開いている。全国の建築家から集められた写真は、普段見過ごすような街や村の光景、出会った巨匠や建築家など、貴重な場面が映し出されている。写真は21日に開かれたパーティー。  同企画は、建築家の自慢の写真展実行委員会(代表・吉田研介吉田設計室代表)が担当。全国の建築家か… Read More
  • 【コルビュジエ】建築設計資料約3万8000点をオンライン配信! エシェル・アン エシェル・アン(東京都新宿区、下田泰也社長)はフランスのル・コルビュジエ財団と共同し、同財団が保存する建築設計資料約3万8000点のオンライン配信サービスを開始した。日本語・英語・仏語に対応しており、世界中からコルビュジエの高精細な建築設計資料を閲覧できる。画像は公開中の図面。  下田代表は19日にフランス大使館で開いた記者会見で、「簡単に原資料に当たることができるようになるため、コルビュジエ研究の手法を大きく変えることになるだろう」と期待… Read More

0 コメント :

コメントを投稿