2012/10/10

モダンさを全面に! 新潟・三条市のスノーピーク本社屋

素直でシンプルなデザイン
新潟県三条市にある約16・5haもの広大な草原に2011年4月、キャンプ用品などを製造販売するスノーピークの新社屋が完成した。「キャンプフィールド内に本社をつくりたい」というオーナーの夢は、大成建設の設計・施工で形づくられた。計画当初からFM(ファシリティ・マネジメント)を取り入れ、同社独自の個別インタビュー手法などを用いながら、関係者から真のニーズを吸い上げていった。打ち合わせ回数は延べ50回以上。設計の主担当者、関政晴設計本部建築I群シニア・アーキテクトは「お互いに、ものづくりにはこだわりを持っているだけに、緊密なやり取りを心掛けた。個人的には理想のオフィスだと思う」と語る。
 施主がアウトドアを生業としているだけに、環境との共生に最大限配慮した。「土地の形状を変えず、景観を阻害しない。そして、スノーピーク製品の持つ素材感や品の良さ、本物志向といった精神を踏襲し、素直でシンプルなデザインにした」(関氏)。
 新社屋には、好きな場所にテントを張るように仕事ができるフリーアドレスのオフィスのほかに、工場や店舗も併設している。オフィスや工場は、敷地内のキャンプ場に訪れた人などが自由に見学できる。交流の場を設けることで、開発・製造側がユーザーのニーズを直に感じられる空間を具現化した。
 関氏は「インターネットの普及などにより、ユーザーとの接点は多様化しているが、フェース・トゥ・フェースで利用者側も楽しめるのが一番いい。それに見合う建築にしたかった」と振り返る。
 建物の規模はRC一部S造地下1階地上2階建て延べ5070㎡で、高さは約11m。エコや自然を露骨にアピールせず、打ち放しコンクリートとガラスを多用したモダンな雰囲気にまとめた。
 緩やかな傾斜地形に従った階段状の断面構成を採用し、ボリュームを抑えることで景色などを妨げないよう工夫した。また、建物自体がキャンプ場から近隣住宅を隠すバリアとなり、非日常感を演出している。
 工事段階では降雪を見越し、約半年で躯体部分を造り上げたという。設計本部建築I群の川村信之統括は「設計と施工が密に連携したゼネコンならではの総合力が発揮できた」と胸を張る。
 新社屋は、第25回日経ニューオフィス推進賞の最高位となる経済産業大臣賞を受賞。大成建設の設計案件では初の快挙となった。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年10月10日10面

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