2012/10/09

現場最前線!・震災にも耐えた仙台市地下鉄東西線荒井トンネル

完成区間のシールドトンネル
2015年度の開業を目指して、建設工事が進められている仙台市地下鉄東西線。その東側起点となる荒井トンネル工区の施工を担当しているのがハザマ・五洋建設・徳倉建設・橋本店JVだ。
 同工区は、荒井駅から六丁の目駅(ともに仮称)までの長さ1484mの上下線(東線、西線)をシールド工法で掘削するとともに、荒井駅の一部となる長さ22・6mのシールド発進立坑を開削工法により構築するもので09年7月に着工し、10年10月には東西線建設事業では初のシールド発進式を行い掘削を開始した。

 「鉄道独特の精度を守り、まずは規格値内に納めること。線形の確保にはかなりシビアな管理が必要だ」と語るのは、トンネルの現場経験が30年というハザマの一関文孝所長
。首都圏の地下鉄で3本のトンネルを掘り抜き、この工事のため仙台に赴任したエキスパートだ。

トンネル終点側での作業
一関所長が今回の工事で最大のポイントと位置付けるのがトンネルの発進部だ。直径5・5mのシールドマシンで、土被り4mの非常に浅い部分からの発進に加え、地質は水分に弱い砂地の軟弱地盤。「最も地表に影響が出やすい土質であり、ここをうまく掘るのが最初の目標」と照準を定め、仙台市の仕様に基づいて泥土圧気泡シールド工法を導入し慎重に作業を進めた。
 最初の難関を突破し、工事は順調に進んでいたが、掘削が約500m付近に差し掛かった昨年3月11日に東日本大震災に見舞われた。幸い、仙台東部道路が津波をせき止め、現場への浸水は免れた。迅速に作業員を避難させた一関所長は「震災で人身事故が起きなかったことが何よりだった」と振り返る。
 シールドトンネルは、セグメント間のわずかな隙間が揺れを吸収する緩衝帯の役割を果たしてほぼ無傷と、地震への強さを証明。被害は防音ハウス内に積んでいたセグメントの部材が崩れたことによるハウスとセグメントの一部破損のみと最小限で済んだ。
 3カ月間の工事休止期間に破損した12m分のセグメントを新たに製作するとともに機械の点検、ハウスの補修と地震対策などを実施。工事再開以降は、1日約10mのペースで掘り進め、ことし6月までにすべての掘削を終えた。現在は西線で軌道敷設の準備工事を進めており、「発生したら致命的」というトンネル内でのトロッコ事故の防止にも万全を期している。
 「今後は細かい仕事で作業が毎日変わっていくため、詳しく打ち合わせしながら進めていくことが大事」と気を引き締めながら、来年3月の完成に向けてスパートを掛ける。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年10月9日6面

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