2012/10/18

【山嵜一也の書を読み海を渡れ(19)】都市に内在する時間という癖を読み解く

キングクロス駅地上コンコース
ロンドン中心部、テムズ川南岸部その名もサウスバンク。この街の発展は著しい。その口火を切ったのがミレニアム事業の一つであるテートモダン。レンガ造りの煙突がシンボリックな旧火力発電所を現代美術館へと改修した。エネルギーを生み出す場所から文化を生み出す場所へ。この街では古さと新しさの意外な組み合わせが建築と都市空間の化学反応を引き起こす。
 英国の産業を支え、役目を終えた他の発電所も改修されている。ロンドン東部のワッピング旧水力発電所はおしゃれなレストランへと変わり、西部地区バタシーでは白い4本の煙突の旧火力発電所を近隣のフットボールクラブ、チェルシーがホームスタジアムへの改修を提案したことで、最近話題を呼んだ。
 キングスクロス地上駅にはコンコースを覆うマッシュルーム型の大屋根の建築がオリンピックに合わせて竣工した。広場の端には歴史的価値のある建築として指定されている湾曲したレンガ造ホテルがあり、その境界線まで半円大屋根が伸びている。網の目のような白い鉄骨構造体の圧倒的な存在感が同じく指定建築であるレンガ造の駅舎にも映える。
 街には100年以上も前の建立記念碑の掲げられた建物が至る所にあり、人々はその中で生活をしている。街角の小さな本屋に入れば必ずその地域の歴史を綴(つづ)った本があり、セピア色の写真には現在ドラッグストアのある場所に当時の薬局が写り、時が経っても変わらぬ街の様相がうかがえる。スクラップアンドビルドの街、東京からやって来た僕らがロンドンで感じるのは時を継承するその街並みだと思う。
 法隆寺に仕えた最後の宮大工、棟梁・西岡常一とその弟子たちは、本著で木の癖を読み取りながら適材適所へ配置することの大切さを説く。これをレンガ造の都市に置き換えるならば、時間という要素がその『都市の癖』として捉えられるのではないか。
 ここでは時間という都市の癖を読み解き、新しさが絶妙のバランスで加えられている。そして、それが未来の歴史をも形成することになる。
 (コラムからあふれた日常をツイッターでつぶやきます www.twitter.com/yamazakikazuya)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年10月18日14面

『木のいのち木のこころ―天・地・人』 AmazonLink

Figuring out the habit of time in the city
In central London, the south side on River Thames is called Southbank. This area has changed dramatically. The trigger of development, Millennium project, was Tate Modern.An ex-power station with a symbolic brick chimney was converted to a contemporary art gallery. In this city,the unexpected combination between old and new makes the chemical reaction in architecture and urban space.
Other ex-generating stations which supported the British industry and terminated its role are refurbished as well. The hydraulic power station in Wapping, East London became the fashionable restaurant and another thermal power station with four whitechimneys in Battersea, West London is recently proposed to be the football stadium for neighbor football club, Chelsea.
The mushroom shaped roof above a station concourse at Kings Cross completed for London Olympic Games.The roof extended to the edge of curved brick listed hotel building. The meshed white steel structure makes contrast to the brick work wallof also listed station building.
On streets, many buildings with monuments of erected year, more than100 years ago, still exist and people live in. The small bookshop in localarea has books about its unique local history. The sepia coloured photos on pages show the former pharmacy where the drag chain store does business at present. We can see stream oftime. People visit London from the scrap-and-build city, Tokyo
is impressed by the townscape with itshistory.
The last temple carpenter, Mr Tsunekazu Nishioka and his apprentices who had worked for Horyu-ji temple, told us that it is important to read the habit of trees and to locate the right tree for the right place. If this logic is placed into the brick city, London, time can be a habit of this city.
In here, people figure out the habit of this city and add the new element onto old with exquisite touch. It will create the future history.

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