2012/10/31

【BIM】意匠設計者向けの気流解析ソフト アドバンスドナレッジ研

CFDによる気流解析
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の普及によって「意匠設計者にも愛用されるようになった」と説明するのは、アドバンスドナレッジ研究所(東京都新宿区)の池島薫代表。提供する気流や温熱の環境シミュレーションソフト『Flow Designer』は販売から10年の節目を迎え、ユーザー層に変化の兆しが見え始めている。
 そもそもビル風などの気流解析は、CFD(数値流体力学)に基づく専門知識が必要とされ、建設業界では技術研究部門などがユーザーの中心で、意匠設計者が使うケースはほとんどなかった。同社が販売を始めた2002年当時は既にCFD関連のソフトが30本近く存在し、新規参入は難しいとの指摘も少なくなかった。そこで「設計者向けのCFDソフトをつくる」ことを心掛けてきた。
 現在のユーザー企業は、ゼネコンや大手設計事務所などを含め200社を超える規模にまで拡大した。近年は、設計者がプロポーザル提案の中で積極的に活用し始めている。支持されているのは「設計しながら簡単に気流解析ができる」手軽さだ。

◇スケッチアップ、ライノからもデータ取込み

 搭載されているクイック解析機能(解析範囲・約10万メッシュ)を使えば、約10秒で解析結果を得られる。設計者のユーザーは建築のアイデアを膨らませながら大まかな気流分布を把握し、ある程度のアイデア出しで形を決めた段階で精度解析(300万メッシュ)を行っている。「2つのモードの切り替えで効率的に解析できる点が強み」になっている。
 建築教育の現場でも、CFDを積極的に取り入れる動きが拡大している。Flow Designerは国内の建築系大学で演習に使われるケースが増加、世界中から最新ソフトの売り込みがあると言われる米国のハーバード大学大学院でも購入され、建築設計とCFDはより密接な関係性でとらえられている。
 29日にリリースしたばかりの最新版「Flow Designer10」では、設計者がコンセプト設計に使う頻度が高まっていることを踏まえ、3次元モデラーの『Google SketchUp(グーグル・スケッチアップ)』や『Rhinoceros(ライノセラス)』からのデータ取り込みも可能にした。

◇日射積算機能も

 1年を通じて算定できる日射積算の新機能は、窓からの日射だけでなく、太陽光パネルの設置計画を立案する上でも活用できる。室内の音環境にも対応できるように、低周波騒音の音響解析機能も追加した。同じ設計データを音解析にも活用した初の試みだ。建物の表面圧力を算出できる数値風洞の機能も入れた。
 池島代表は「これまで設計者が施主へのプレゼンテーションに風や温度の分布を盛り込むケースは少なかったが、ここ2年ぐらい前から建築の配置や形を決める根拠として使われるようになっている。これはまさにBIMの効果であり、BIMの普及に呼応するように、当社のユーザー層も明らかに変わってきた」と強調する。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年10月31日16面

 

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