Solibri社のモデルチェッカーの画面 |
発注者は業務の最終段階で設計者から提出された図面を検収しなければならない。従来の2次元CADデータでは、自動化できる部分がほとんどなく、設計内容のチェックは人の手によらざるを得ない。A1サイズで見ることを前提につくられているデータをコンピューターの小さい画面でチェックすることは並大抵のことではない。
それがBIMでは一変する。もともとBIMでは、ひとつの3次元モデルデータから2次元図面が出力されるので、図面間の整合エラーが起こりにくいのであるが、さらにモデルチェッカーを使用すると、建築要素と設備配管の干渉など設計担当者が異なるために多発する不具合も自動的に見つけ出してくれる。また、各種設計基準などへの整合をチェックすることも可能であり、GSAでは、フィンランドのSolibri社に依頼して、GSAの要求水準に即した設計がなされているかを検証するアドオンを開発している。室空間の属性データが米国規格協会の用途分類に適合しているかどうか、室面積が入居官署や機能ごとに適切に配分されているかどうかなどを自動的にチェックでき、その結果がわかりやすく可視化される。図面閲覧機能やチェック機能だけであれば、BIMを使った図面作成に慣れていない発注者でも簡単に操作できる。
Solibri社は障がい者対応の寸法チェックができるアドオンも開発している。米国では、こうした判断に曖昧さの余地がないルールだけでなく、法令適合など人の判断が必要となるものについても、チェックできるプログラムを関係機関と協力して開発しているとのことであった。
スタンフォード大学では、BIMがプロジェクトで実際にどの程度、活用されたのかを総合的に評価する指標を開発しており、GSAも協力している。VDCスコアカードと呼ばれるこの評価システムは、計画、選択、技術、実行の4領域それぞれに重み付けをして採点し、結果はチャートでわかりやすく図示される。28例のプロジェクトの採点結果が同大学のホームページで公開されているが、選択と技術については相対的に点数が高く、計画と実行については点数が低い。米国にあっても、技術先行であり、計画立案や実際の運営についてはまだまだ改善の余地があるというところが見て取れる。
こうした第三者による客観的な評価が普及すれば、進んだ技術を持った会社は次の仕事を受注しやすくなるし、そうでない会社はさらに技術を磨こうと努力するようになるであろう。米国では、BIMを使用したというだけで評価されるのではなく、BIMを使用する会社の間でも、その技術力を差異化し、高め合う競争が始まっているのである。
内閣府沖縄総合事務局開発建設部営繕課長 大槻泰士
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年10月3日10面
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