鹿島は、東京農工大学、森林総合研究所、ティー・イー・コンサルティング(東京都台東区)と共同で、国産スギ材のみを利用した純木質耐火集成材「FRウッド」を開発し、1時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。製造販売は、住友林業と連携し、大規模木造建築物から小規模な個人住宅まで幅広く普及させていくとともに、FRウッドを使った鉄筋コンクリート造や鉄骨造との混合構造の提案にも注力していく。
木材を利用した耐火集成材は、表面を石こうボードなどで覆った「被覆型」、芯材に鉄骨を使った「鉄骨内蔵型」、難燃処理を施した木材による「燃え止まり型」の3種類がある。鹿島などが開発したFRウッドは燃え止まり型で、木造が見える木質空間を創出可能な上、構造部材として利用できるため、見た目と構造の両面で木造を実現する。
木材全体の需要拡大を狙った「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が2010年10月に施行したものの、木造建築物は耐火性能に課題があり、従来の木造技術では、法律で適用が制限されている。このため、都市部の防火地域での木造建築物や大規模な木造建築物の建設は、石こうボードなどで木材を覆う仕様以外は困難で、耐火性能を持つ新木造技術の開発が待たれていた。
FRウッドは、荷重支持部の周囲に難燃薬剤を注入した難燃処理層を配して耐火性能を確保。その薬剤注入前に、CO2レーザーやドリルでインサイジング(孔開け)処理し、薬剤の注入量と注入分布を均一化している。また、小断面(260×290mm)から、それ以上の大断面など設計条件に応じた自由な断面設計が可能だ。
鹿島が設計、住友林業が施工する飲食店舗「音ノ葉グリーンカフェ」(東京都文京区、建築主・音羽建物グリーン事業本部)の独立柱、飛び梁に初適用し、広大な緑地に囲まれた自然環境にふさわしいカフェとするため、従来の木造耐火建築物のように石こうボードに覆われることのない木造・木質感あふれる空間を創出する。音ノ葉グリーンカフェは国土交通省の12年度木造建築技術先導事業に採択されている。
製造は、協同組合の遠野グルーラム(岩手県遠野市)が担い、震災の復興にも寄与。今後は、住友林業と連携して製造工場を拡大していく。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年10月12日3面
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