「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を前提としたイベントではない」とは、10月25日に東京・有明のTFTホールで開催される『ArchiFuture2012』の実行委員長を務める松家克アークス建築研究所代表。有効な生産手法として注目されているBIMも、根底にはコンピュテーションの活用が原動力になっている。その活用の幅は「設計者や施工者にとどまらず、発注者にも広がり始めている」と説明する。
ArchiFutureは今回で5回目を迎える。国内でのBIM普及と呼応するように歩んできた。松家氏は「BIMの視点から考えるのではなく、コンピュテーションの活用によって生まれる価値やイノベーションの部分にもっと注目すべき」と強調する。
2000年以降、本格的な3次元設計ツールの登場を境に、生産のあり方に新たな兆しが出てきた。建築生産にはシミュレーション技術が欠かせなくなり、クラウドに代表されるようにネットワーク環境が業務に欠かせない時代になっている。当初は3次元CG(コンピュータ・グラフィック)や部分的なシミュレーションが主流だったが、05年以降からは生産情報をプロセスとしてつなぐやり方が注目されるようになった。
「川上から順に生産する従来の流れとは別に、高度化したコンピュテーションの活用を背景に各段階、各プレイヤーがデータをシェアしながら物事を決める時代になっている。そうしたシームレスの流れを実現できる考え方として、BIMの可能性に期待が集まっている」
ArchiFutureでは国際的に活躍する建築家・坂茂氏の基調講演やグラフィックデザイナー・原研哉氏の特別講演に加え、大林組が実践する現場でのタブレット端末活用、空調設備工事会社のヤマトが取り組む3次元モデルデータを活用した設備配管の工業化などの試みも紹介される。「建築生産の新たな方向性を知る手がかりになるはずだ」
注目すべきは、建築主サイドの考え方も変わり始めている点だ。パネルディスカッションでは、BIMの試行プロジェクトに取り組む国土交通省官庁営繕部を始め、日本郵政、森ビル、ジェイアール東日本コンサルタンツがパネリストとして参加し、企画段階から利用サービスに至るまでの3次元モデル活用の可能性を論じる。
「建築やまちづくりの合意形成では3次元モデルによる可視化が有効。合意のあり方はトップダウンの“ツリー型"から、双方向に広がる“セミラチス型"になろうとしている。これはそれぞれの立場から目的意識を共有し、同じ方向に進む考え方であり、まさに現在の建築生産はセミラチス的な情報共有が求められている」
建設通信新聞(見本紙をお送りします!) 2012年10月17日10面
0 コメント :
コメントを投稿