2013/09/22

【歩道】バリアフリー改修を飛躍的に早くする床版

車両などの進入通路部や交差点で歩道を切り下げるマウンドアップ歩道は、安全や交通バリアフリーの観点から、高低差を解消するための工事が全国的に広まっている。車道と同じ高さに切り下げる際に課題になるのが、民地側のブロック塀などの倒壊対策で、特に民地に接する側溝の入れ替え工事は慎重さが問われる。ホクエツ関東が開発した「バリアフリー床版」は、堀の倒壊を防ぐとともに、施工期間の大幅な短縮を実現。埼玉県の新製品・新技術マッチングモデル事業に選ばれ、試行工事の検証で有効性が認定された。

 2000年の交通バリアフリー法の施行により、車道より高いマウンドアップ歩道をフラット歩道に改修する工事が増加。民家のブロック塀などの基礎部は歩道の側溝と隣接するケースが多く、既設の側溝を敷設替えする時にブロック塀の倒壊が懸念された。
 埼玉県本庄県土整備事務所が一般県道勅使河原本庄線で実施した「バリアフリー安全対策工事」でも、沿道の民家にブロック塀が多く存在する。そのため、人家密集区間でのマウンドアップ歩道の解消に向け、マッチング・モデル事業により工事短縮を含めた施工合理化を実現する技術を募集した。
通常のマウンドアップ歩道


◇側溝をカッターで切断

 同社は、この課題を克服するため、新規に製品の開発に着手した。伊藤次男設計部設計課長は「まず、現場に何度も足を運び、状況を把握した。また、施工上の課題や発注者や沿道住民の意向をしっかりと把握し、期待に応え、役に立てる技術の開発に取り組んだ」と振り返る。
 マウンドアップ歩道をフラット歩道に切り下げる従来工法は、歩道を車道と同じレベルに合わせる際、側溝の高さもそろえる。コンクリートカッターで余分な側壁を切断し、蓋を掛けるコーピン部を現場打ちコンクリートで形成する必要がある。
 一方、提案した工法は、まず既設側溝をフラット歩道の計画高と床版厚分の側壁部で切断する。その上にプレキャストの「バリアフリー床版」を設置して溝を暗渠化し、その上部を舗装して完了する。
 現場打ちコンクリートの工程がないため、スピードを上げられるほか、暗渠上部も舗装化することで平たんで広い歩道空間を確保できる。また、導水溝は、延長方向にスリットを設け、迅速な雨水排水を可能にした。さらに、暗渠にするとふた版のがたつきで起こる騒音や破損も防げる。
 試験施工は、一般県道勅使河原本庄線で実施。伊藤課長は「当初考えていたよりも早いスピードで施工が進んだので、工場の生産を急いだ」と振り返る。
 床版の技術では、バリアフリー床版とは別に、埼玉県新製品・新技術マッチングモデル事業の「コスト縮減・環境負荷軽減に適応した用排水兼用側溝の整備」でも採用された。同社の「既製品のふた版利用」によりオープン水路上に歩行空間を創出し、歩行者の安全の確保とコスト縮減に貢献した。
ホクエツ関東 さいたま市岩槻区城南1-1-3。電話048-791-1335

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