2013/09/06

【現場最前線】国内最大能力の可搬式浄化プラント JR鎌倉車両センター工事

土壌浄化プラント
大成建設・奥村組・錢高組JVが神奈川県鎌倉市で進めている、東日本旅客鉄道(JR東日本)発注の鎌倉総合車両センター深沢事業所更地化工事で、可搬式(現地組み立て式)として国内最大の処理能力を持つ土壌浄化プラントが稼働している。処理能力は1時間当たり45m3を誇り、プラントの組み合わせを工夫することで粒径が小さなシルト土壌に対応しているのが大きな特徴。環境への配慮も徹底し、既存の車両点検棟の建屋を活用して屋内にプラントを設置することにより、周辺に与える騒音、振動、粉塵の飛散を大きく低減させている。


◇細粒分30%超も対応
 同工事では、13.4haの広大な敷地にある建屋77棟、軌道、設備などを解体した上で、鉛などの重金属で汚染されている土壌を浄化する。敷地をA-Hの8エリアに分け、段階的な解体と土壌浄化を進めており、7月末現在で既存施設などの解体はGブロックまで完了している。
 土壌浄化に当たっては、現場に細粒の土粒子を多く含むシルト質の土壌が多いことから、プラントには工夫が施されている。一般的なプラントでは、遠心分離によって細粒分を分級するサイクロンを使うことが多いが、濁水処理プラントへの負荷などを検討した結果、細粒分をより効率的に浄化するハイメッシュセパレーターを採用した。
 サイクロンによる分級では細粒分が多くなるほど、水処理プラントの負荷が大きくなるといった課題があるが、現場に導入しているプラントは細粒分が30%を超える土壌でも洗浄が可能になっている。ハイメッシュセパレーターを適切に稼働させることで、水処理プラントとフィルタープレスへの負荷を抑制し、設備全体を円滑に運転している。

 
ハイメッシュセパレーターの採用でプラントとフィルタプレスの負荷を抑制した
◇国内最大能力

 プラントの処理能力は1時間当たり45m3で可搬式としては国内最大となる。プラントの設置に当たっては、Fブロックにある車両点検棟の建屋を有効活用した。屋内設置にすることで、騒音、振動を30%、粉塵の飛散量を50%低減している。
 13.4haのうち、48%が汚染面積と判明しており、6万4000m3の汚染土壌を浄化する。7月末現在で、掘削土約3万m3のうち、2万m3の洗浄が完了している。
 現場では、場外処理や搬出ダンプによる環境負荷を低減するため、汚染土壌の6割を場内で処理して埋め戻し、場外処理は4割を目標に計画している。
 平岡康之作業所長(大成建設)が土壌浄化対策工事を指揮するのは、大阪府高槻市の現場に続き2回目。大阪の現場は全量場外処理だったので洗浄プラントによる浄化は初めてとなる。
 平岡所長は、「非常厳しい環境配慮が求められる中、周辺への環境負荷をいかに低減するかに取り組んでいる」と説明。現場の外周では7カ所に設置した計測器で、騒音・振動を毎日測定しているほか、粉塵飛散量も月1回測定し、環境面への対策に万全を期している。

◇最大級の土壌浄化
 プラントの稼働は9月末までとなっているため、効率的に洗浄を進めるためにも「広大な敷地で掘削の順序を明確化し、絶えずどこかを掘削し、プラントに供給している」という。
 また、「現場は日影がないことから、詰め所にクーラーを完備するなど、作業員の体調管理を心掛けている」と、この夏の酷暑での作業員の健康管理にも細心の注意を払う。
 3社JVということもあり、連携を密にするため、朝礼、昼礼、夕礼を毎日実施し、情報共有も怠らない。「毎日80人弱が働いているが、敷地が広いのでコミュニケーションを頻繁に取り、安全で効率的な施工を心掛けている」
 今回の土壌浄化はJR東日本にとっても最大級となる。同社横浜支社設備部の山本一俊土壌改良工事プロジェクトリーダーは、「環境負荷を低減して、周囲に迷惑をかけないよう、法に基づいた品質管理をしてもらっている」とJVの取り組みを高く評価した上で、「施工者と協力して最後まで品質確保を徹底していきたい」と意気込みを見せる。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年8月28日

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