2013/09/22

【マーケット断面】地下駐車場を浸水から守る 豪雨防水商品続々

地下駐車場への浸水をブロック
多発する集中豪雨に、地下への浸水被害を防ごうと止水対策を講じる動きが、都心部のオフィスビルを中心に高まりを見せている。玄関や地下駐車場入口など開口部に設置する止水板や専用シートへの問い合わせは急増しており、メーカー各社は対応に追われている。設置ニーズは多様化し、新たな商品開発の動きに発展している。


◇見積もり件数3倍
 「見積もり件数は、この5カ月間で約3倍に増えた」と明かすのは文化シヤッター。4月は26件だったが、5月に40件、7月に50件を突破し、8月には77件にまで膨れ上がった。建物開口部のシャッター部分にわずか5分で設置できる簡易型止水シート『止めピタ』を2012年9月に商品化するなど、従来のパネル式と合わせて商品ラインアップを拡充してきた。止水分野の売り上げは12年度に1億5000万円を確保しており、13年度は4億円を見込む。
 防水シートタイプの出荷が前年比3割増というLIXIL鈴木シャッターでは、電気を使わず雨水の重さで防水板を自動設置する業界初の『アピアガード』にも動きが出てきた。長崎のオフィスビル地下駐車場に初納入を終え、10月には広島の工場への取り付けも決まった。設置場所の掘削が欠かせないため、新築案件への採用を想定しているが、最近の豪雨の影響もあって「既存案件への問い合わせも増えている」状況だ。
簡易型止水シートのニーズは高い


◇メーカーも新製品開発
 今月に業界初となるステンレス建具一体型の止水シート『STウォータープロテクト』の販売に踏み切った三和タジマは、初年度に5億円の売り上げを見込む。約3分で簡単にセットできる手軽さに加え、シート自体が床下に収納できるため、外観も通常と変わらない。意匠性を重んじるオーナーや設計者からの要望を受けて開発した。オフィスビルや病院、ブランドショップなどのエントランス用止水シートとして売り込みを始め、既に百貨店やマンションからも問い合わせが舞い込み始めている。
 富士精工から事業を継承し、01年から防水・止水市場への参入に踏み切った岡村製作所では、東日本大震災をきっかけとした企業のBCP(事業継続計画)拡大を背景に、防水板や防水扉など関連製品の売り上げが拡大している。近年は前年比20%以上の伸びで推移。従来はオフィスビルや公共施設が中心だったが、製造業からは生産拠点向けの設備として、引き合いが増加している状況だ。
設置3分という製品も


◇ゲリラ豪雨も3倍に
 ウェザーニューズ(千葉市)の調査によると、ことし7月末から8月中旬までに発生した“ゲリラ雷雨"の件数は全国平均で前年比2.7倍となった。関東南部では4.5倍を記録、特に東京都と千葉県では6倍増の勢い。この記録的な異常気象を背景に、浸水対策への関心は一気に高まりを見せている。
 メーカーでは、止水対策の市場を年30億円規模と試算している社もあり、東日本大震災を境に「止水対策は不可欠な設備投資との意識の高まりにより、今後数年は市場拡大が続く」(岡村製作所)と期待が高まる。
 商品化の動きは12年度から目立ち始めたが、今後もさらに広がる勢いだ。脱着式やシート式など現在4タイプの商品を投入している文化シヤッターでは「自社で扱うあらゆる開口部商品に対応できるよう新商品の開発を進めている」状況で、LIXIL鈴木シャッターも「コンビニエンスストアなどの店舗出入口向けに簡易版の商品化を考えている」という。
 東京都内では5区が止水板設置の工事助成を行っているように、浸水対策への支援制度が全国的に広がりつつあることも、メーカーにとっては追い風だ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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