2013/09/06

【現場の逸品】低コストの高流動埋戻材「スラモル」 金子コンクリート

金子コンクリート(横浜市)の金子敬祐取締役スラモル事業部長は、暇をみつけては建築工事現場への“飛び込み営業"を欠かさない。「興味を持って使ってもらえることも多くなり、大手・準大手ゼネコンの現場でもリピーターは多い」と手応えを口にする。高流動埋戻材『スラモル』の納入実績は1996年の初出荷から、これまでに13万5000m3を超え、導入現場も1500件に近づこうとしている。
 開発のきっかけは、神奈川県横須賀市に建設中だったマンション現場からの依頼だった。基礎部の埋め戻し作業は当初、流動化処理土で対応する予定だったが、コストが合わず別の対応が求められた。現場周辺は道が狭く、ミキサー車が入れない状況で、元請けは頭を悩ましていた。


◇スラッジ水を利用

 現場の埋め戻しは掘削土を再利用するケースが多いが、敷地が狭い都心部では保管が難しい。土を埋め戻す場合は深さ50cmごとに転圧作業も求められる。そこで同社はミキサー車洗浄時に発生する「スラッジ水」に着目した。現場から戻される生コン(戻りコン)も洗浄され、砂利と砂に分けられる。スラッジ水はその際に出る洗い水で、脱水処理後には産業廃棄物として処分する必要があり、スラモルへの活用によって経営的にも処理費を軽減できるメリットがあった。
 試行錯誤を繰り返し、スラッジ水と砂に一定量の固化材を混ぜ合わせることで、流動性が高い独自の埋め戻し材に行き着いた。飯田義憲常務は「埋め戻し場所に流れ込むように浸透していく。特に階段回りなど転圧しにくい場所に威力を発揮する」と、スラモルの利点を強調する。

 
◇わずか3日で埋戻し完了


初納入した横須賀のマンション現場では500m3の埋め戻しをわずか3日で完了した。固化材を1m3当たり50㌔混ぜ込んだ場合、埋め戻し後およそ1日で固まる。スラモルの原料はすべて生コン工場で使う材料で構成している点で「品質も保証される安全・安心の材料」(金子本部長)だ。価格は輸送距離によるが、目安は生コン価格の6割程度で、コストメリットもある。
 スラモルは、流動性を長時間保てることから、長距離の現場輸送も強みだ。横浜市の同社工場から100㎞以上離れた国道138号篭坂峠(山梨県山中湖村)の道路工事に出荷した実績もある。4年前からは賛同する生コン工場との業務提携を拡大しており、現在は6社と契約を結んでいる。
 金子雄次社長は「99年に特許を取得し、独自で売り込んできたが、処理費用がかさむ戻りコンの対応は同業他社も同じ。まとまった量のスラモルを提供できる利点も考慮し、ネットワークの拡大を進めている」と強調する。同社はこれまで年800万円程度に達していた戻りコン処理費を、スラモル出荷以降は一円も計上していない。

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