2013/09/07

【げんば最前線】砂杭8277本! 石巻の北上川河口部堤防復旧工事

巨大津波の襲来により甚大な被害を受けた宮城県石巻市の北上川河口部。水田が広がっていた長面地区は一面海と化し、多くの尊い生命と財産が一瞬にして奪われた。河川管理施設の被害も大きく、堤防が流出・決壊したほか、護岸や樋門・樋管などが被災した。震災発生から間もなく2年半を迎える中、河川堤防の復旧が急ピッチで進められている。右岸側最河口部の工区を担当している熊谷組の現場を訪ねた。


 
被害が大きかった河口付近
◇堤防被害は200カ所以上

 追波(おっぱ)湾から北上川を逆流した巨大津波は、河口から約4㎞の位置にある大川小学校や周辺家屋などをのみ込み、国道398号の新北上大橋の一部を破壊した。
 津波はさらに、国道45号の飯野川橋付近から川伝いに北上し、河口から約17㎞地点にある高低差約3.7mの北上大堰を乗り越え、約50㎞離れた岩手県境付近まで達した。
 これほどのエネルギーを持った津波は、河口部の河川管理施設にも甚大な被害をもたらした。東北地方整備局北上川下流河川事務所によると、堤防の流出・決壊や亀裂、沈下、樋門・樋管の損傷は200カ所以上にのぼるという。

◇粘り強い堤防

 このうち、堤防の本復旧工事は、2012年秋から着手。右岸側約6.5㎞(12工区)と左岸側約11.4㎞(24工区)の計約17.9㎞の堤防を復旧する。
 計画高は、最河口部付近が標高8.4mで震災前の4.6mに比べ3.8m高くなる。その高さから緩やかに傾斜させて4.6mまで下げていく。
 津波に対して“粘り強い"構造となるよう、法尻部の強化や陸側法面の補強を行うほか、表面に張るコンクリートブロックも通常の1㎡当たり350㎏よりはるかに重い同2tのブロックを採用する方針だ。
 被害の大きかった右岸側の最河口部で「北上川下流長面下流地区築堤工事」を担当しているのが、打屋恵士所長が率いる熊谷組のクルーだ。12年10月に着工し、工事用道路や河川締切工などの準備工事を行った上で、5月下旬からサンドコンパクションパイル(SCP)工法による地盤改良に取り組んでいる。

◇SCP工法


 SCPは、緩い砂地盤の中に密度の高い砂杭を打ち込むことによって地盤を締め固め、液状化を防ぐ工法。打ち込む砂杭の数は、8277本。同現場では施工機4台を使い、急ピッチで作業を進めている。
 SCP工法の導入に当たり、課題となったのが砂の調達だ。河口部両岸の地盤改良に必要な砂は、約60万m3にのぼる。生コン用骨材に使える砂は供給がひっ迫しているため、鉄鋼スラグやフェロニッケルスラグなどを代替材として活用しているほか、震災がれきを洗浄し分別した砂も使用している。
 熊谷組の担当工区では、10月中に地盤改良を完了させ、築堤工事に着手する予定だ。

◇全社挙げて復旧


 打屋所長は「全社を挙げて復旧・復興工事に取り組んでいる当社の中でも注目されている現場の一つ。ヒューマンエラーや重機による事故の防止に最大限に努め、1日でも早く完成させたい」と話している。
 北上川下流河川事務所管内では、鳴瀬川河口部の堤防約6.6㎞の復旧工事のほか、旧北上川河口部の堤防約8㎞の新設に伴う用地買収も進められている。全体完成は15年度末を目指す。
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