アーチシェルター |
◇インナービル方式
現在、自治体やディベロッパーなどから高い関心が寄せられている津波避難ビルの一つが、同社が2012年10月に開発した「アーチ・シェルター」だ。楕円状の頑丈な外郭「アーチウォール」の中にインナービルを配置するという発想で、震度7クラスの大地震や20m級の大津波に耐える「津波BCPビル」をコンセプトとしている。
開発当初、インナービルはアーチウォールから独立させ、免震構造の採用を基本としていたものの、顧客の声を踏まえてバリエーションを増やした。アーチウォールとインナービルを一体化させて免震構造を省いた低コスト版や、上部にマンションなどを配置する高層化バージョンがそれだ。中間免震をオプションとして選ぶこともできる。
◇改修でも対応 国土交通省の調査によると、全国で津波避難ビルに指定されている建物のうち4分の3が2-4階建てで高さが足りず、さらに全体の約18%は旧耐震基準の建物で耐震診断も実施していないという。新開発した「フレーム・シェルター」は、こうした避難ビルを改修して安全性を高めるために開発した。
強度と高さが不足しているRC造建物を、鉄骨トラスの「メガフレーム」で補強しながらかさ上げするという発想。建物外周を取り囲むように取り付けるため、施工中でも建物内部への影響が少ない。コストと工期を抑え、改修のハードルを下げることで普及拡大を目指す。学校や病院などへの適用を見込んでいる。
フレーム・シェルター |
◇解析データも自動作成
同社は、中央防災会議の地形データを独自にデータベース化し、エリアをクリックすると解析データを自動作成するシステムを整備している。これまで2、3週間かかっていた津波シミュレーションが2、3日で可能になるなど大幅に効率化した。
津波避難ビルの設計では津波力を評価して反映させるが、ビル風などの予想と同様、流体力学などに基づく高度な解析が求められる。さらに地域によって津波の想定高さが異なる上、津波の影響は地形や周辺の構造物などさまざまな条件によって変わってくる。
このため同社は地図データベースに加えて、2次元と3次元のシミュレーションシステムをそれぞれ開発し、設計に反映させる仕組みを構築している。既存建物向けのフレーム・シェルターには2次元シミュレーションを、新築のアーチ・シェルターには3次元シミュレーションを使って事前に津波力を評価する。2次元は安全で合理的な設計を可能とする一方、3次元シミュレーションは津波力を直接評価できるのが特徴で、水理模型実験との比較によってその精度も検証済みだ。
街区内の建物に対して津波力を算定 |
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