2013/09/10

【建設論評】2020東京、すぐ為すべきこと

新国立競技場の内観予想
大朗報である。2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催決定である。その瞬間であった、8日の未明は日本列島が喜びの声に沸きまくった。暗い話題が多かった中で、飛び込んできたビッグニュースは久しぶりに明るく、未来を切り開くものだった。汚染水処理がクローズアップされ、それまでの優位性が直前に揺らいでいただけに、喜びもひとしおであった。
 建設産業界にとっても、その朗報は、産業全体で分かち合うものである。行政、公益発注機関、ディベロッパー、設計事務所、建設コンサルタント、ゼネコン・マリコン、道路建設会社、設備工事会社、専門工事業界、メーカー、資機材会社すべての力が結集しなければ遂行できない国家プロジェクトである。

 世界に発信すべきはオリンピック・パラリンピックのイベントだけではなく、その舞台となる東京、日本の、あるべき都市と国土の姿でもあるからだ。建設産業全体が都市、国土、社会に強く結びつき、その役割を示すラストチャンスであり、新しい力を発揮するファーストチャンスとなろう。

◇市場が一変する

 そのために、建設業界が急ぐべき課題は山積みされている。第1は、環境変化への認識と決断だ。ついこの間までの課題は、供給力過剰の競争激化、市場の先細りをいかに乗り越えるかという生き残り策であった。だが、市場は一変する。2020年に向けて、まず東日本復興と原発事故対策を今まで以上にギアアップしなければならない。と同時に国土強靱化路線をさらに大胆に踏みださなければならない。復興し、安全・安心なしなやかな国土と都市の姿を世界の人々に見てもらわなければならない。
 前回の東京オリンピックで建設された首都高速道路は全面改築をさらに急ぎ、羽田空港の新たな滑走路整備計画も現実のものになり、成田空港とのアクセスも停滞が許されない。オリンピック関連施設だけではない。圏央道や地下鉄などの都市インフラ、ターミナル駅周辺の再構築、第2東名・名神やリニア中央新幹線の建設、沿道建築物の耐震・制震、ホテルなど観光施設の整備、東京と日本各地を結ぶ交通網の再構築と考えると都市とインフラの大改造が問われていることになる。
 当然、財源は限られているわけだから、国や自治体の財源だけでなく、新たな民間資金の財源をどうつくるのかという問題も、議論ではなく具体論として構築しなければならない。


招致に情熱をかけた選手と元選手ら
◇施工能力の構築待ったなし

 こうした環境変化に建設産業は対応できるのか、それが第2の課題となる。建設業界には、震災復興は数年先まで、その後どうするのかという見方があった。だから、技能者や技術者が足りないということにも限定的な当面策という判断が支配的であった。だが、これからは、そのような対応では、押し寄せる需要にまったく対応できなくなる。そして対応できないでは済まない、社会的要請と責任に直面しつつあるのである。震災復興を急ぎ、原発問題に対処し、国土強靱化を担い、そして都市とインフラの大改造を担う施工能力、技術力、供給力をとり急ぎ構築しなければならない。まず足元を見よう。労賃引き上げ、これが大道無門、待ったなしである。 (田)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)


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