2012/07/13

小嶋一浩氏が選んだ「生きるための家」展 東京都美術館で15日から

会見する小嶋委員長と山田さん
 東京都美術館(東京都台東区)は15日から、新しい「すまい」の形を展示する「生きるための家」展を開く。開催に先立って開いた記者発表会で、審査委員長を務めた小嶋一浩氏は「家は、敷地やセキュリティーなどを考え『閉じる』ことでつくる。しかし被災地を訪れて、そういったディフェンシブな家をつくっても仕方ないと感じた。今回の展示は、人を閉じ込める家ではなく、居場所をつくる作品となっている」とあいさつした。

 同展では、若手建築家の設計した159案の住宅モデルから選ばれた39案の住宅の模型を展示する。このうち、公開審査を経て選出した最優秀提案「家族の生きるための家」(設計・山田紗子氏)は、天井高10mの展示室に原寸大で展示される。
 「家族の生きるための家」は、家を貫く複数の大黒柱と斜めに傾いた床が特徴。設計した山田氏は「震災の後に被災地を訪れた際、個人の空間がない古い民家と壁が多すぎる仮設住宅を見た。設計にあたってはそのどちらでもない、透明すぎず、不透明でもない空間をつくり、人のより所となる家になるよう心掛けた」と述べた。
 複数の大黒柱と斜めの床については「柱を増やして複数の中心と境界をつくり、床を斜めにすることで、階ごとの連続性を高めた。その結果、一人で居る空間を確保しつつ、誰かと一緒に居ても気にならない空間をつくることができたと思う」と語る。
 これに対し、小嶋委員長は「一見すると人が住むような家には見えないが、人が生きるより所となる明るさがある」と評価した。
 時間は午前9時30分から午後5時30分まで。入場料は600円(税込み)。会期は9月30日まで。

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