2012/07/30

ブータンの人はなぜ幸せなのか? 千葉工大の建築がシンポ開催

千葉工業大学建築都市環境学科は、3年間にわたるブータン王国の伝統住居・集落の実測調査研究を踏まえたシンポジウムを、東京都港区の建築会館で開いた。古市徹雄教授を中心とする調査団が、講師に招いた月尾嘉男東大名誉教授らと、同国の状況やコミュニティーのあり方を話し合った=写真。

 コミュニティーデザインをテーマに講演した山崎亮京都造形芸術大教授は、島根県海士町で総合計画づくりに携わった事例を挙げ「住民が自ら動き出せば人と人との結び付きが強くなる。そのことが、お金や学歴以外で幸せの度合いを高めることに寄与している」と、コミュニティーの重要性を強調した。
 「知識が破壊する伝統社会」をテーマに講演した月尾氏は、明治維新によって西洋文明が入ることで、ユートピアだった日本が不幸になることを懸念した西洋人が多かったことを紹介した。テレビやインターネットが普及するブータンの現状を重ね合わせ「文明社会では知ることが当たり前だが、知識を持つことが幸せかどうかという思いがある」と疑問を投げ掛けた。
 その上で「家族、地域にまでコミュニティーが広がっていくことが重要になる」と、人同士のつながりの大切さを指摘した。
 古市教授は「ブータンのGNH(国民総幸福量)で大事なことは人と人のつながり。建築は人と人をつなげるためにつくられるもの」とし、10月に同国でコミュニティーを守る建築プロジェクトを提案する。

『ブータン、これでいいのだ』 AmazonLink

Related Posts:

  • 都知事賞に「欅アパートメント」 東事協が第38回東京建築賞を決定 「欅アパートメント」 東京都建築士事務所協会(大内達史会長)は、第38回東京建築賞の受賞作品を決めた。戸建て住宅、共同住宅、一般一類(延べ3000㎡未満)、同二類(同以上)の4部門でそれぞれ最優秀賞、優秀賞、奨励賞を選んだ。応募総数は前回の42点を大きく上回る74点だった。東京都知事賞は、共同住宅部門最優秀の欅アパートメントに決まった。25日に東京都新宿区の京王プラザホテルで開く総会後に表彰式を行う。 今回の応募は、2009、10年に… Read More
  • 西沢立衛事務所の十和田市現代美術館などに決定 東北の公共建築賞 『十和田市現代美術館』  公共建築協会(春田浩司会長)は20日、仙台市青葉区のハーネル仙台で第13回公共建築賞優秀賞に選ばれた『こもれびの降る丘遊楽館』『十和田市現代美術館』『真下慶治記念美術館』の3作品の関係者への賞状伝達式を開いた。 『こもれびの降る丘遊楽館』 同賞は、公共建築の総合的な水準の向上に寄与することを目的に1988年から隔年で実施。優秀な設計と施工に加えて、地域社会への貢献や施設の管理保全などを総合的に評価… Read More
  • CO2を原料にしたRC代替構造材を開発中! 建築構造家の今川氏の「エコストラクチャー」 4分の1モデルで振動実験  建築構造家の今川憲英氏(TIS&PARTNERS代表)が中心に開発した新素材「CO2エコストラクチャー」の公開振動実験が相模原市の職業能力開発総合大学校第1実験場で行われ、阪神・淡路大震災級の揺れに対し、崩れずに耐え、その強度の高さを実証した=写真。  CO2エコストラクチャーは、酸化ケイ砂と水ガラスにCO2を吹き込むと瞬時に固まる新素材で、その圧縮力は高強度コンクリート並みで、引っ張り強度はコンク… Read More
  • JSCA賞作品賞に原田氏(立教大新座キャンパス新教室棟) 立教大新座キャンパス新教室棟  金沢海みらい図書館  日本建築構造技術者協会(JSCA、金箱温春会長)は、第23回JSCA賞の受賞者を発表した。作品賞は立教大学新座キャンパス新教室棟を手掛けた原田公明氏(日建設計構造設計部門技師長)、新人賞は金沢海みらい図書館の田尾玄秀氏(オーク構造設計)に決まった。22日に東京都千代田区のホテルメトロポリタンエドモントで行われる総会後、受賞者記念講演会を開く。  立教大学新座キャンパ… Read More
  • 川崎に木造ハイブリッドの施設群 INAの設計で明大の黒川農場がオープン 明治大学は16日、川崎市内に整備を進めていた黒川農場の開所式を開いた。環境・自然・地域との共生を目指した新時代の農場として約12・8haの敷地に、本館、展示温室など25棟総延べ約8900㎡の施設を配置。農場のコンセプトを具現化するため、木材などの再生可能な素材を多く取り入れたほか、周辺環境との調和に配慮し、親しみやすく温かみのある施設群を整備した。  シンボルとなる本館は、RC・S造と木造のハイブリッド構造を採用したほか、アカデミー棟には… Read More

0 コメント :

コメントを投稿