東日本大震災の被災地で続いているがれきの処理。その処理に当たって産業医科大学医学部の谷口初美教授が、撤去作業に伴い感染症と有毒ガスが発生する恐れがあると、日本ペストコントロール協会(JPCA)の機関誌7月号で注意を喚起している。
感染症としては、過去の廃棄物処分場での調査結果を踏まえ、レジオネラ属菌による呼吸器感染症のほかに創傷感染(破傷風)を挙げた。また、有機物や石こうボード、海水由来の硫酸イオンが含まれているがれきを扱う場合は、硫化水素ガスが発生する危険性があるとして、防毒マスクを着用するよう指摘している。
感染症関係ではほかに食中毒を挙げた。谷口教授らの調査によると、津波によって海水をかぶった田の泥から食中毒の原因となる細菌ナグビブリオが検出された。これは通常、海水や河川の汽水域に生息しており、通常の田には生息していない。この結果について同教授は「田が海水をかぶり、その後の移動もなく放置状態となっていたと考えられることから、生息していた」との見方をしている。そのため、海水のにおいがする場所では海水由来のビブリオ属菌が生息している可能性があるとし、作業後や食前、調理前などには、手洗いを励行するなどの接触感染対策をするよう求めている。
がれきの撤去処理では、硫化水素ガス発生の危険性を挙げた。硫化水素ガス発生が予想される業務は、労働安全衛生法に規定された「事業者が健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない業務」のうち、「ガスおよび酸素欠乏空気による健康障害を受ける業務」に該当するとし、刺激臭がするようながれき置き場に、無防備で近づくことは避けるべきと警告した上で、撤去作業の際には、内部にこもっていた有毒ガスが吹き出す危険性があるとしている。硫化水素ガスは濃度1000ppmで即死するという。
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