2012/07/18

熱負荷計算にBIM導入 大林組が高精度な省エネ設計システム開発

 大林組は、高精度な省エネルギー空調設計が容易となる「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)と連携した熱負荷計算システム」を開発した。従来の空調設計は、建築図面を基に手作業で各居室空間のゾーンを分析後、熱負荷計算など一連の作業を実施していたが、同社によると、今回開発した国内初のシステムにより、それら一連の作業が一貫して行え、関連する作業時間が従来に比べてほぼ半減するという。

 建物の空調設計は、設備設計者が建築図面で居室の広さや窓・壁の位置、日照など総合的に分析し、日照や外気の影響を受けやすい窓際と外的影響を受けにくい建物中央部の設計の違いなど、それぞれの居室空間をゾーンごとに分割して空調設備の配置を検討。その結果を熱負荷計算して、1年を通じて常に快適な室温を保つ熱量を算出し、空調機の能力を決定している。
 今回開発したシステムは、建築BIMソフト上での簡単な操作による空調ゾーンの自動設定に加え、建物の熱的特性や空調システムの特性を考慮した空調ゾーンデータの統廃合編集も可能だ。ゾーンごとに各種面積が自動計算され、熱負荷計算用データが効率的に作成できる。
 2012年4月に建築設備技術者協会から公開された最新版の高精度な動的熱負荷計算プログラム「NewHASP/ACLD」を利用し、その入力データの作成や出力データの活用に伴う時間と手間を省く入力支援システムも新たに独自開発した。各ゾーンの計算結果の集計機能、最大熱負荷探索機能、グラフ出力機能を持つ出力支援システムも兼ね備えている。
 同社は、このシステムを活用し、環境への配慮と快適性を両立した高品質な設計とともに、顧客の多様なニーズに応えられる設計・施工を追求していく。

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