2012/07/05

いわきの小名浜港 3年以内に全港湾施設を復旧へ

急ピッチで進む小名浜港の復旧工事
 福島県いわき市にある重要港湾、小名浜港の港湾施設は、津波よりも地震の被害が大きかった。稼働していた34岸壁は沈下や崩落などにより、ほぼ全面的に使用不能となった。5号、6号埠頭では前面の護岸が最大4mほど滑動し、先端護岸が広範囲にわたり崩落した。

 岸壁背後の陥没をアスファルト舗装で応急補修し、岸壁法線に段差ができ船舶係留ができなくなったところに、台座を付けてかさ上げするなどの応急復旧を行い、昨年6月までに全体の約7割の公共岸壁を暫定的に使えるようにした。
 これにより「夏の電力需要増大期を前に、常磐共同火力勿来発電所、東京電力広野火力発電所などの稼働を支える石炭や重油が供給できた」(魚谷憲東北地方整備局小名浜港湾事務所所長)。
 さらに、精錬所や化学工場などで使用する原材料の供給も可能となることで工場が稼働でき、雇用の維持・確保を支えた。

◇原発事故収束作業の前線基地に

 また、陸上輸送が途絶える中、製薬に必要な物資を小名浜港経由で輸送し、全国60万人の患者への薬品供給を維持。福島第一原子力発電所事故の収束に向けた作業に当たっても、小名浜港が機材搬送などの前線基地として機能するなど、震災からの復旧・復興に大きな役割を果たしている。
 現在、おおむね2年以内に主要岸壁の復旧と、3年以内にすべての港湾施設の復旧を目指して、急ピッチで作業を進めている。さらに、震災前に着工していた臨港道路建設工事も再開されており、「まさに港中、工事だらけといった状況」(魚谷所長)が続く。

『東日本大震災 復興への道標 12カ月の記録』 建設通信新聞社 AmazonLink

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