2012/07/26

日本設計がスマートシティの専門組織を立ち上げ

日本設計の提案するスマートシティ
ICT(情報通信技術)を活用し、エネルギーの効率利用や低炭素都市づくりを目指すスマートシティーの取り組みが、国内外で活発化している。日本設計は他の設計事務所に先駆けて、先進的な情報発信を手掛ける専門組織「スマートシティ計画室」を設立した。まちづくりや建築にかかわるさまざまな業務の成果を統合し、環境先進都市の実現に活用する。目指すのは、地域の個性を生かしたオーダーメードの環境価値提案だ。

 スマートシティー事業への問い合わせを始め、IT企業や不動産会社との連携など、日本設計が同事業にかかわる機会は増えている。スマートシティ計画室長に就いた田島泰都市計画群都市計画部計画室長は「それぞれの部署でスマートシティーにかかわる仕事の依頼が増えている。窓口を一本化して関連情報を社外に発信するとともに、社内でも情報を共有し技術レベルを引き上げる」と役割を説明する。

◇計画室の13人

 同計画室のメンバーは13人。建築、都市計画、環境・設備、ランドスケープ、企画担当、国際など所属部署は多岐にわたる。「連携していることが、外から見ても分かるようになった」(田島室長)ことが、設立効果の一つだ。
 同計画室メンバーの桂木宏昌環境・設備設計群ソリューショングループ長は「事業にかかわる人によってスマートシティーの定義は異なる。日本設計としての定義を明確にした上で、実現のために何ができるのかを考える」と基盤づくりを急ぐ。
 スマートシティーは、スマートグリッド(次世代送電網)を始め、自然エネルギー利用や環境配慮ビル、エリアマネジメント、交通計画などさまざまな要素で構成され、日本設計は各分野で実績がある。「いまのところ、これがスマートシティーだ、という実績はないが、これまでの成果を統合して今後のプロジェクトに活用していく。建築物の設計の実績が多く、デマンドサイドのニーズを分かっていることが日本設計の強み。その情報を活用しながら、スマートグリッドのつくり込みやマネジメントの方法を提案したい」(桂木氏)と、日本設計らしいプロジェクトへのかかわり方を模索する。

◇藤沢の構想にも参加

 国内では、パナソニックが中心となって神奈川県藤沢市で進めるスマートシティー構想に参加し、コンセプトや地区計画のガイドラインづくりを支援している。田島室長は「整備の手法だけでなく、運用の仕組みづくりにどのようにかかわっていくかが重要となる。まちにも個性があり、運用によってまちは変わっていく」と強調する。「オーダーメードの環境価値提案」を目指す同計画室の取り組みは、画一的な整備ではなく、地域特性を読み解いた持続可能なまちづくりがベースとなる。
 スマートシティーの取り組みは海外でも注目を集める。特に中国では、低炭素都市づくりが国の方針として進められ、エコシティー、スマートシティーが100カ所以上で実現に向けて動いている。
 同社は、唐山市の曹妃甸(そうひれん)地区で進むエコシティー450haのマスタープランを手掛けるなど中国で数件のスマートシティーに携わる。
 計画室メンバーの岡田栄二国際建築設計群副群長は「スマートシティーに限らず、海外のまちづくりでは日本の先進的な環境技術が役立つ」と説明する。中国にとっては、環境技術だけでなくTOD(公共交通指向型開発)も日本の事例が参考になるという。「品川インターシティのように鉄道駅からフラットにビルに入ることができるシステムや、地下のネットワークからビルにつながる仕組みを参考にされる事例が多い」(岡田氏)。

◇国外プロジェクトへ

 自動車に頼らない交通システムは、スマートシティーの重要な構成要素になる。桂木氏も「日本の先行事例を役立てることは、海外にとって有意義なことだと思う。ある程度日本の実績を示しながら、海外でスマートシティーの仕事を進める」と、計画室として国内外の区別なくプロジェクトに取り組む考えを示す。
 一方、中国プロジェクトの課題として、岡田氏はインセンティブを挙げる。「政府主導で低炭素都市づくりを進めているが、コストが割高になるために低炭素化に協力する市民が増えてこない。初期コストが高くても運用コストを含めるとトータルで安くなるということを説明しても、あまり理解してもらえないようだ。市民の啓発とあわせて、政策的なインセンティブが必要となる」と説明する。
 同計画室は、目に見える形として8月中旬までにパンフレットを作成し、広く取り組みをアピールする。田島室長は「設計事務所として、具体的なプロジェクトにこだわりたい。上流の制度づくりにかかわることは重要だが、まず『これがわれわれの考えるスマートシティー』というものを実現したい」と、ものづくりにこだわった事業展開を目指す。

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