2013/06/22

【デザイン】TOTOの分岐点! あえて水栓金具らしさにこだわる『GG』シリーズ

「この商品が分岐点になるだろう」と、TOTOデザイン本部プロダクトデザイン部デザイナーの岩谷剛氏は、キッチン用の水栓金具『GG』シリーズを指差す。「これからのTOTOが目指す方向性を、デザインと機能の両面から表現した商品の1つだ」
 商品化したのは2012年7月。ハンドル部分の金属量は以前の『Hi-G』シリーズと比べ90グラム減の160グラムに抑えた。岩谷氏は造形的要素を減らし、あえて「水栓金具らしいデザイン」にこだわった。企画段階から商品化までに2年以上の歳月をかけた。そこには「エコへの貢献」というデザイナーとしての意識があった。
 GGシリーズには、水と湯の使い分けを明確化した「エコシングル機構」が搭載された。これは東京ガスの提案を受け、関東学院大学と協力し、同社が商品化したものだ。食器洗いの時には、水だけつかうつもりでも気づかずに給湯機を作動させてしまう「お湯の無駄使い」が水栓金具の機能的な課題としてあった。
 そこで浮かび上がったのは、使用時に水と湯の境を感じさせ、使い分けの意識を持ってもらうアイデアだった。開発に携わった水栓開発センター水栓要素開発グループの谷口隆博氏は「水と湯の使い分けを“カチッ"という音のクリック感によって感じてもらい、意識せずにエコに取り組める」仕掛けを具現化した。

ユニット内のバルブ
苦労したのは、水と湯を切り替えるバルブユニット内のバルブ形状だった。従来の形状と異なり、切り替え時の境を明確化するために段差をつける必要があり、10パターンから最適な形状を絞り込んだ。国内事業推進部機器水栓事業開発グループの高橋哲グループリーダーは「地域や設置場所により水圧が異なるため、切り替え時に流量を一定に保つことは難しい。当社は業界に先駆けてこの課題をクリアした」と強調する。
 同社によると、エコシングル水栓を導入した場合、節湯効果は約30%。4人家族に換算し、水道代とガス代を合わせて年間約9400円の節約が実現する。切り替えに対応したバルブユニットの開発により、各商品への導入が一気に進み、水栓金具への採用率は既に全体の8割に達する。
 エコシングル水栓は、11年11月に第8回エコプロダクツ大賞で環境大臣賞、13年5月には建築設備綜合協会の第11回環境・設備デザイン賞で優秀賞に選ばれた。機能面とデザイン面それぞれの観点から評価された格好だ。「無意識にエコを実現する機能と、極力少ない材料で構成するデザイン。ものづくりからエコに貢献する。それは5年先、10年先を見据えたTOTOのカタチに通じる」(岩谷氏)。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年6月19日

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