2013/06/06

【不落】予定価格127億でも応札ゼロ 呉市新庁舎で2度も全員辞退

新市庁舎の完成予想
予定価格が127億円超の庁舎工事でも応札ゼロ--。2度にわたって入札参加者が全者辞退した広島県呉市の新庁舎建設工事。これまでなら「予定価格が低くても応札する企業はあったはず」(大手ゼネコントップ)という建設業界でも、「単純に予定価格が合わなかったから」(事情をよく知る準大手ゼネコントップ)と、目先の受注高より利益重視、赤字につながる低価格受注はしないという経営判断をする企業が広がってきた証左とも言えそうだ。
 今後、3回目の公告に踏み切るという呉市の新庁舎だが、施工企業がこれまで決まらなかったことについて、参加辞退企業や地元企業の話を総合すると、官積算単価の低さに連動して、「厳しい工期と職人がいない」ことが背景にはある模様だ。東京都内でも、単価が低く、「職人の手配が進まず着工が遅れている」(専門工事業トップ)ケースが増えているという。受注重視から採算重視へ、企業判断も変わりつつある。

◇辞退理由は「予定価格ではムリ」

 入札参加者からの辞退理由は2度とも「予定価格内では収まらない」だった。市は、それぞれ入札中止後に、辞退した企業と設計者からのヒアリングを実施し、見直しの参考とした。辞退した企業からは、労務費や資材高騰のほか、「地域貢献提案による地元建設企業の活用予定率25%は簡単ではない」などの入札方式に関する指摘や、「下請け(型枠、鉄筋)の廃業、震災の影響、消費税増税前の駆け込み契約などにより、職人の確保が難しい」「市の見積査定率が厳しい」「工期が厳しい」などの声も上がった。
 2度の参加者辞退を踏まえ、今後の予定価格の算出では、新労務単価を適用するとともに、型枠などの単価や生コンクリート、鉄筋、鉄骨などの資機材費は物価資料の価格を適用し、すべての見積もりを取り直すなど、市場動向を反映させる。再入札時には、予定価格を127億0500万円に引き上げたが、価格上昇分による設計金額の大幅増を抑えるため、機能やデザインに影響のない使用部材や仕上げ材を汎用性の高いものに変更するなど、債務負担行為限度額127億3000万円は超えなかった。
 3度目の公告に当たっては、増額に伴う補正予算を編成するほか、総合評価方式の採用を断念し、一般競争入札に変更、監理技術者の資格要件緩和も検討する。
 建築・設備一括発注とする発注形態や単体とJVの混合入札とする入札参加資格は前回と同じ。
 また、今後の建設需要の増加により、労働者の確保など、施工者にとって負担が増加していくものと判断し、工期は24カ月から標準工期である27カ月に変更する。
 今後のスケジュールは、6月議会での補正予算議決を経て、7月には一般競争入札を公告する。8月中に入札し仮契約した上で9月議会での契約議案提出、正式契約を目指す。10月の着工、15年12月の完成を予定している。

建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年6月6日

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