2013/06/17

【復興版】津波堆積物を再資源化 東北大大学院らが研究中!

高橋弘東北大大学院教授らが、東北地域づくり協会(菅原政一理事長)の支援を受けて取り組んでいる「瓦礫混じり津波堆積物の再資源化」の社会実験が、宮城県大郷町の柿崎工務所大郷ボンテラン工場で開かれた。東日本大震災で大量に発生した津波堆積物に含まれる土砂をほぼ完全に再資源化する手法として、被災地への普及が期待される。

社会実験の様子
大震災の津波で海から運ばれた土砂と、ごみ・がれきが混在した津波堆積物の発生量は推計で約1009万t。5月末までに約780万tが撤去され、32%に当たる319万tの処理・処分が完了している。
 一部は復興資材として再利用されているものの、早期の全量処分と復興資材として活用するための手法の確立が課題となっている。

◇東亜の分級工法とボンテランで改良

 今回の社会実験では、東亜建設工業が開発した「ソイルセパレータ・マルチ工法を用いた津波堆積物の有効利用技術」で津波堆積物を分級し、この中から抽出された汚泥を高橋教授らが開発した「ボンテラン工法」で土質改良し、資材に再資源化。強度や耐久性などの試験を行いながら、河川堤防などへの復興資材としての適用可能性を探っている。
 東亜建設工業は、浚渫土砂用分級システム「ソイルセパレータ・マルチ工法」に、がれきやごみを分別するシステムを追加。5次にわたる工程を経て、がれき・ごみや礫(れき)などを除去し、砂や汚泥などが効率的に抽出できるよう改良した。
 一方、「ボンテラン工法」は、高含水汚泥に古紙破砕物と固化剤を添加し、水処理を必要とせずに緑化基盤材に再生させる土質改良工法。石灰系やセメント系の改良剤を混ぜることで、優れた強度特性や変形特性、浸水への耐久性を持つ堤体材にもなる。
 この日の実験では、宮城県名取市で発生した津波堆積物をソイルセパレータ・マルチ工法システムで分級した後、泥土に古紙破砕物などを投入。緑化基盤材への改良と、セメントを加えて重機による撹拌(かくはん)を実演した。
 これまでの試験結果によると1㎡当たりおおむね90キロニュートン以上のせん断強度を確保。難透水性改良土を調べる水浸試験では、通常の固化処理土に比べて優れた耐久性が確認されている。
 高橋教授は、「被災地ごとに津波堆積土砂の性状が異なる中、一定の品質を確保することに苦労した。固化剤の組み合わせで、さまざまな再生資材に利用できる。復旧・復興の現場で積極的に活用してほしい」と語っている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年6月17日

Related Posts:

  • 【復興特別版】福島で7地区の模型を一堂に展示 「失われた街」模型復元プロジェクト  NHK(日本放送協会)福島放送局と「失われた街」模型復元プロジェクト実行委員会は24日から3月4日まで、福島県いわき市のいわき産業創造館(LATOV)で、「記憶の街」模型復元プロジェクト・ふるさとの記憶-ふくしま特別展を開く。企画・構想は槻橋修神戸大大学院准教授+槻橋研究室、東日本大震災における建築家による復興支援=アーキエイドが協力する。  震災で失われた街や村を500分の1スケールの模型で復元するこのプロジェクトは、建築を学ぶ学生… Read More
  • 【近畿地整】阪神・淡路、東日本大震災を「わすれない」パネル展開催 2/9から西宮市、2/17から和泉市  近畿地方整備局は、「大規模災害の記憶と防災・減災展」と題したパネル展を開く。9日から14日まで兵庫県西宮市のららぽーと甲子園、17日から21日まで大阪府和泉市のららぽーと和泉で開催する。  パネル展は、「わ・す・れ・な・い 阪神・淡路大震災 東日本大震災」と銘打ち、両震災や災害大国に生きる自然災害のリスク、南海トラフ巨大地震、国土交通省のTEC-FORCE(テックフォース=緊急災害対策派遣隊)などを紹介し、防災・減災の重要性や道路の役割… Read More
  • 【防災教育】自然災害から「まち・くに」守るには? 小学校~高校向け学習ワークブック発行  「千年に一度はあしたかもしれない」。震災を契機として、子どもたちに対する防災教育の重要性が再認識されている。こうした中、内閣官房国土強靱化推進室は学習ワークブック「『防災まちづくり・くにづくり』を考える」を発行した。イラスト・写真を多用することで、子どもたちに自然災害の恐ろしさを分かりやすく伝えるとともに、自分たちが住む「まち・くに」を地震や大雨などから守るために何をするべきかを考えてもらう内容となっている。  ワークブックの制作は、土… Read More
  • 【青木茂建築工房】耐震性向上、内外装と設備一新で蘇る! 東北初のリファイニング建築完成  東北地方初のリファイニング(再生)建築として、青木茂建築工房(大分市、青木茂代表取締役)が設計・監理を担当した(仮称)佐藤ビルリファイニング工事(仙台市青葉区)が完成した。鉄建が施工した。1969年に同区花京院に建てられた同ビルの規模はRC造5階建て延べ965㎡。東日本大震災で半壊認定を受けた事務所付き賃貸共同住宅を改修し、RC一部S造5階建て延べ1008㎡の賃貸共同住宅として再生した。  既存不適格建物のため、近隣関係者からの同意や仙… Read More
  • 【復興特別版】縄文遺跡で福島を元気に! 「宮畑ミステリー大賞」最優秀は寺島明美さん  縄文の謎で「元気福島」を発信--。福島市にある縄文時代の集落跡にのこる“2つの謎”をテーマにした小説・漫画を広く募り、新たな魅力として全国に発信しようというユニークな取り組み「宮畑ミステリー大賞」各賞が決定。最優秀賞に輝いた寺島明美さん(福島市在住)の「ミヤハタ! タイムスリップ」など、各賞7作品を収録した『福島市 宮畑ミステリー大賞 作品集「縄文4000年の謎に挑む」』(現代書林、980円+税)の出版記念会見が1月27日、東京都中央区… Read More

0 コメント :

コメントを投稿