2013/06/16

【建築】汎用資材で特殊デザイン 工学院大に木造建築のスポーツ施設

新弓道場
工学院大学が八王子キャンパス内で建設を進めてきた新弓道場と新ボクシング場が完成した。ともに学内初の木造建築で「どこにでもある資材を使いながら、特殊な形状をつくり出したかった」と、設計した同大学の冨永祥子准教授(福島加津也+冨永祥子建築設計事務所)は語る。「特別な資材を使えば大規模な施設や特殊な形状がつくれるのは当然。一つひとつの小さなものが組み合わさって、大きなものをつくり出したかった」という。


新弓道場の見上げ
◇メモリアル施設

 本格的な木造建築の建設は工学院大学としては初めての試みで、「125周年記念事業にふさわしいメモリアルな施設になった」という高田貢理事長の言葉どおり、いずれも国産ヒノキの無垢材だけを使い、伝統的な手法を継承しながらも無柱空間を実現。しかも低コストで完成した。
 弓道場では、細い部材を格子状に配置した格子フレームの山型アーチ構造を採用。部材で貫を挟み込むことで、軽くしなやかな強さを生み出した。ボクシング場では、通常は柱材として利用する太い木材をずらしながら積み重ねた天秤フレームのフィーレンディール構造により、サンドバッグなど重量のある練習器具を吊り下げることもできる。

◇水平と垂直


ボクシング場
冨永准教授は「伝統的な木造建築は柱と貫の架構による水平と垂直の構成で成り立っているため、新施設にも水平と垂直を多用した。また、使用する木材の太さを変えることで、弓道の静的なイメージとボクシングの動的なイメージも表現できたと思う」と話す。
 一方、部材の接合部には「匠の技」を使わずにボルトやビスなど一般的な技術を採用。伝統技術を継承しながらもメンテナンスの容易さや「つくることの美しさ」を追求した。
 新施設の整備に当たり、国産木材の利用を企画・提案した工学院大学の後藤治常務理事・教授は、その理由について「現在、政府は国産木材の利用促進を進めている。しかし無垢材にはコスト高のイメージがあり、あまり使われていない。むしろ、コストが安いとされる合板や接着剤を利用した木材が数多く使われる。しかし、無垢材でも工夫すれば安くて良い建築ができることを示したかった」と説明する。
 コストを抑えるため、設計段階から材木業者との協議に入っていた。そのため、早期の資材確保や食害の柱材利用などを可能とし、無垢材を使いながらも低コストで効率的な工事を進めることができたという。
 今後は学生の教材としても使っていく方針で、工夫すれば低コストでも良い建築がつくり出せることを示していきたいという。


ボクシング場の見上げ
◇施設概要

▽設計・監理=福島加津也+冨永祥子建築設計事務所
▽構造設計=多田脩二構造設計事務所
▽施工=大丸ハウス
▽工事名称=工学院大学八王子キャンパス弓道場・ボクシング場新築工事
▽建築場所=東京都八王子市中野町2665-1
▽建築主=工学院大学
▽建築面積
弓道場148㎡
ボクシング場102㎡
▽延べ床面積
弓道場139㎡
ボクシング場92㎡
▽工事費=計5320万円
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年6月13日

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