2013/06/19

【笹子トンネル】接着剤の吊り部使用は回避へ 国交省が事故調報告書

天井板撤去中の笹子T 国交省の報告書より
国土交通省は18日、中央自動車道笹子トンネルでの事故を受けて設置した「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会」(委員長・今田徹東京都立大名誉教授)の報告書を公表した。天井板に打設された接着系ボルトの中には、工事完成時点から所定の引抜強度がない部分もあったなどと指摘。設計施工段階から事故につながる要因を内在していたと推定した。事故を教訓として設計や施工、補修、点検、材料といった各種情報を道路管理者間で共有・継承する重要性を訴えている。
 落下メカニズムの推定によると、引抜強度不足の接着系ボルトのうち、特に重くて大きい「L断面」部分において、経年の荷重作用や材料劣化で強度の低下・喪失が進行したと分析。解明に至っていない部分も少なくないが、設計時の安全率(余裕度)設定や施工時の接着剤の強度発現、材料自体の耐久性、点検・維持管理体制など、さまざまな要因が複数作用して累積された結果、事故につながったと見ている。
 これまでの調査・検討を踏まえ、接着剤樹脂は長期耐久性に対する知見が蓄積されるまで、常時引張り力を受ける吊り構造個所への使用を避けるべきと明記した。設計施工基準を持たない新しい材料や部材を採用する際は、破壊形態や耐久性などの性能が確認された範囲内で、使用部位を慎重に選択することも求めている。
 設計時に配慮すべき視点には、一部の損傷が崩壊など致命的な状態につながる可能性の回避や、確実・容易な更新を可能にしておくことなどを挙げた。施工段階では、管理項目・方法に関する受発注者協議を綿密にすべきとした。設計や施工の記録だけでなく、点検や補修補強の履歴なども保存する仕組みを構築し、維持管理に反映させていくことが重要としている。このほか、載荷試験によらず強度を推定できる非破壊検査手法や監視技術、維持管理性の高い構造・材料など新技術の開発にも期待を寄せている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年6月19日

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