2013/06/25

【総合評価】発注者の考えを当てるゲームになってる! 土木学会がシンポで警鐘

「ゲームになっている」「特定の会社ばかり受注している」--。土木学会のシンポジウムで、総合評価落札方式に対する建設業界の本音が続出した。小澤一雅東大大学院教授は、「いかに楽に発注するかという効率性が大事になっている」と問題点を指摘。「お金だけで選ぶより手間が掛かる総合評価を、何のためにやるのか原点に戻る必要がある」と発注者に再考を求めた。
 シンポジウムは総合評価方式をテーマに、小澤教授が委員長を務める建設マネジメント委員会が21日に開いた=写真。
 全体討議で加藤和彦清水建設第一土木営業本部営業部長は、「技術がもてあそばれている気がする」と問題提起した。同じ技術提案でも、国土交通省のある地方整備局は評価が高いが、別の整備局では評価されないケースや、過剰品質となるオーバースペックの提案も、ある整備局は認めないが、別の整備局は「(技術提案が)てんこ盛りでないと点が取れない」と述べ、技術のダンピングではないかと訴えた。
 さらに加藤部長は、技術が求められているはずなのに、一面では発注者がどう思うか、何を望んでいるかを当てるゲーム化しているという考えを示した。改善の方向として、「整備局によって評価の仕方が相対や絶対で違う。評価するベースを合わせてほしい」と提案した。
 これに対し国交省官房技術調査課の森戸義貴建設技術調整官は、「整備局によって扱いの違いがあるのは、いい評価をするためにいろいろ工夫をしているから。しかし、結果は(受注者が)納得されていないのが現実だ」と説明。「枝葉の違いはあってもいいが、一本、筋は通っていないといけない」との考えを示した。
 一方、大分県建設業協会土木委員会委員長の利光正臣利光建設工業社長は、地元企業が維持管理の仕事を一生懸命しても、新設と違い工事成績で80点以上取ることができず、総合評価方式での受注が難しいと訴えた。
 また、現行の制度は実績と成績を重視する傾向が強いため、「1社が6本も7本も受注する」と述べ、手持ち工事量も評価対象に加え、特定の会社に仕事が偏らないようしないと「地域の業者の育成が困難になる」と主張した。
 小澤教授は、「制度が先にあって、制度を守るためのルールでやっているのではないか。市場の変化に応じて改良してほしい」と発注者に要請した。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年6月25日

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