2013/11/20

【BIM】一歩先行くシミュレーション アドナレッジの熱流体解析

柔らかい風の流れを視覚的に表現した
(大阪工業大提供)
「一歩先を行くシミュレーションを実現できる」と、アドバンスドナレッジ研究所(東京都新宿区)の池島薫代表は、今月発売した熱流体解析ソフトの最新版『FlowDesigner11』に、並々ならぬ自信をのぞかせる。
 注目機能として挙げるのは、機器制御ロジックとの連成強化と、逆解析による感度マップの2つだ。ユーザーは快適性と省エネ効果を厳密に検証でき、設計の根拠出しも従来より格段に早まる。「最新版の新たな試みを大いに活用してほしい」


◇実際の設備運転まで

 室内の気流をシミュレーションする際、設備機器に組み込まれる制御ロジックが障害となり、これまでは詳細な省エネ効果まで導き出すことが難しかった。池島氏は「機器の実際の運転状況を厳密に把握でき、これにより排気口や吹出口の効果的な位置までも含めた緻密な設計が可能になった」と強調する。
 最新版では、制御ロジックとの連成を強化したことで、空間の温度ムラも把握できるようになった。きっかけは、2年前に取り組んだアズビルとの共同開発だった。空調制御の評価と、室内快適性の評価を連成させることに成功し、最新版からはオプション機能として位置付ける。この機能を活用すれば、ロジック自体の最適値までも導き出せるという。
 最新版から標準仕様に位置付けた感度機能については「設計のインスピレーションを引き出す効果が強みになる」と考えている。乾久美子建築設計事務所が手掛ける延岡駅舎(宮崎県延岡市)の設計では、風の抑制を目的に整備する樹木の効果的な配置パターンを導き出すツールとして先行的に使われた。


◇「感度マップ」

 設計者は、導き出したシミュレーション結果に基づき自らのアイデアを総動員させて最適なプランを考察する。新機能は逆解析によって効果を具体的に示すもので、ソフトがあらかじめ効果の有無を判断し、より有効なプランを逆提案する。「これを、われわれは感度マップと銘打っている」(池島氏)。
 最新版には、シミュレーションの表現方法にもこだわりが見える。ユーザーの中には透明度の色レベルを微調整し、柔らかい風の動きを表現しているケースも見られる。単なる分析に使うだけでなく、顧客への提案にも活用する傾向が高まっていることも背景にある。池島氏は「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の高度化に伴い、ツールも着実に進化している」と語る。
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