2013/11/09

【素材NOW】「着色打放しコンクリート」をファサードに

『Praca das Artes』
「海外では外観に着色コンクリートを採用した斬新的な建築が増えてきた」と語るのは、ドイツ化学品メーカーのランクセス社で建材技術責任者を務めるルッツ・コーナート氏。ブラジルのサンパウロ中心部にある複合ビル『Praca das Artes』は打放しコンクリートを赤と茶色に着色し、あえて色むらの風合いを醸した代表事例の1つだ。


◇色合いを醸し出す

 着色コンクリートは無機酸化鉄を入れることで、黄色や黄土色、赤色や茶色、さらには黒色まで幅広い色味を出すことができる。添加率は5-7%。顔料をブレンドすれば、さまざまな色合いを醸し出せる。水セメント比で水の量を若干多くすれば、気泡が多くなるために光が分散され、その結果として着色を薄くすることも可能だ。
 日本では舗装ブロックや住宅の化粧ブロックの着色に顔料が使われているが、近年はファサードのプレキャストコンクリートに採用されるケースも少なくない。高層建築物の外装材で6割を超えるシェアを誇る高橋カーテンウォール工業では2007年に竣工したザ・ペニンシュラ東京(東京都千代田区)の外装材に初採用し、これまでに約50件の導入事例がある。着色にはランクセス製の顔料を使っているという。
 このように日本でも建物外観に着色コンクリートを使うケースは出始めたが、海外のように打放しコンクリート自体を着色するケースはほとんどない。欧州では技術標準が明確化され、打放しのように構造躯体のコンクリートにも使用できるが、日本は着色顔料の扱いが明確でなく、実現するには手間と時間をかける必要があるようだ。

◇明大和泉図書館

 12年5月に竣工した明治大学創立130周年記念和泉図書館(東京都杉並区)。杉型枠を使った打放しのホワイトコンクリートは柔らかい色調の木質感を持つ。13年度のグッドデザイン賞にも選ばれた。設計を手掛けた松田平田設計の藤田啓史総合設計室構造設計部主任は「施主から光を取り込み、明るく開かれた空間を求められ、構造材でありながら意匠にも貢献できる着色コンクリートの採用を決めたが、実現までには相当の苦労があった」と振り返る。
 構造コンクリートに着色顔料を混ぜる扱いは、現時点では建築主事の許可を得にくい。そこで生コンを受け入れた後、現場で顔料を混ぜ合わせるプロセスを経て採用にこぎ着けた。二度手間ではあったが、供試体を採取し、強度性能についても確認した。藤田氏は「苦労の甲斐あって、この実績をきっかけに、社内の意匠担当が着色コンクリートに関心を示すようになった」と変化の兆しを感じている。
和泉図書館





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