2013/11/30

【素材NOW】価格10倍のステンレス鉄筋が採用される理由

愛知製鋼(愛知県東海市)のステンレス鉄筋コンクリートバー『サスコン』が、2001年の販売開始から累計で2500tを超えた。ステンレス鉄筋の価格は最大で通常鉄筋の約10倍。中川英樹ステンレス・チタン市場開拓グループマネジャーは「高価ゆえに採用された案件には、すべて理由がある」と解説する。


◇初物件は清水寺


 海外では1980年代から採用事例があるステンレス鉄筋だが、日本では01年に清水寺(京都市)の音羽の滝に設置された手すりへの採用が初めてとなった。それ以来、同社はトップメーカーとしてさまざまな依頼に対応。並行して社内のエンジニアリング部門では、建築物にステンレス部材を採用する際の技術的な支援も行ってきた。
 製品は01年のニッケル系ステンレス鉄筋『SUS304』を皮切りに、07年にクロム系『SUS410』を販売、11年には国土交通大臣認定も取得した。翌12年には業界で初めて公称直径3.9mmの細径「ASCON-D4」を商品化。鉄鋼メーカーでありながら建設業許可も取得しており、現場溶接が行える利点も同社の特徴の1つだ。

◇地覆鉄筋には欠かせない

 中川氏は「ステンレス鉄筋の市場はニッチで、仕事も限られているが、採用事例を見れば、効果的に使われているものばかり」と強調する。14年の開通を目指して急ピッチで工事が進む長さ3540mの伊良部大橋(沖縄県)では数十t規模が採用されている。床版からむき出しになっている地覆鉄筋の部分は高欄が取り付けられるまでの間、野ざらしの状態になる。その腐食防止にステンレス鉄筋が欠かせなかった。
 青森県の美術館では壁の被り筋として使われた。保水性の高い塗り壁が採用されることになり、通常の鉄筋では錆びてしまう恐れがあった。過去最大規模の140tが使われたのは九州大学の超伝導システム科学研究センター。研究設備に支障がないように、非磁性タイプのニッケル系ステンレス鉄筋が全面的に取り入れられた。

◇エポキシ樹脂以上の耐蝕性
 これまでの採用物件は100件を超える。通常の鉄筋と比較した場合、強度は同じだが、耐食性能には大きな違いがある。そもそもコンクリートの中に存在する塩化物イオンが鉄筋の表面を覆っている不動態皮膜を壊し、腐食は進行する。塩化物イオンの濃度が通常の10倍に達しても、錆びないのがステンレス鉄筋の強みだ。
 現在の販売量は年300t規模。同社は、将来的に1万t規模まで引き上げたいと考えている。インフラ構造物の老朽化対策が急務になる中で、腐食対策にはエポキシ樹脂塗装鉄筋が使われるケースも多いが、それだけでは十分に対応できない部分は多い。「対策の目的が定まれば、市場は一気に伸びていくだろう。価格は高いが、その分の効果は大きい」と中川氏は確信している。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

0 コメント :

コメントを投稿