2013/11/21

【建築】ぬくもりと和やかさ 藤木隆男建築研の「あおぞら診療所墨田」

東京都墨田区の隅田川沿いにあるオフィスビルの1フロアに、重い障害や重篤な疾病を持つ子どもとその家族のための医療拠点「あおぞら診療所墨田」が完成した。医療拠点の機能性と利用者が安心できる家庭的な雰囲気を両立させながら、空間としての統一感も持つ診療所だ。在宅医療の拠点として、今後は子どもたちの終末期医療などに取り組むことになる。


「躯体に合わせて空間を区切ると長方形にしかならない。近代的なオフィスビルのスケール感が医療施設には合わない難しさがあった」と語るのは藤木隆男建築研究所の下川太郎主任技師=写真。これまでにも「お産の森 いのちのもり」(茨城県守谷市)といった意欲的な医療施設の設計に携わってきた。
 「柱や空間が直線的なため、丸や曲線を多用した。また、あえて天井を低くして居心地の良さを高めた」という。「メンテナンスのしやすさでは近代的な病院が最適だが、機能一辺倒にならないよう注意し、家庭的な空間にしたかった」と振り返る。同研究所代表の藤木氏も「重い障害のある子どもがくつろげる場所は難しい。木材の使用や家具のレイアウトなど、機能性よりも温もりや和やかさを重視している」と語る。
 施主である前田浩利院長は「日本の小児医療技術は世界有数の水準だが、これまで命を助けることだけを重視し、助けた子どもたちがどう生きるべきかを考えてこなかった」と指摘。
 その上で、医療機器を手放せない子どもたちの日常生活を支え家族の負担を軽減するためにも、今回の在宅医療拠点が完成した意義は大きいと力を込める。
 設計監理は藤木隆男研究所と知久設備計画研究所、施工は不破工業が担当した。オフィスビルの規模はRC造地下1階地上6階建てで、計画床面積は559㎡。所在地は墨田区東駒形1-3-15。
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