10月16日、伊豆大島(東京都大島町)で発生した台風26号による土砂災害は、多大な人的・物的被害をもたらした。しかし、4つの「砂防えん堤」が土石流を食い止め、より大きな被害を防いだ事実は、あまり知られていない。一方、東京建設業協会(近藤晴貞会長)は被災直後から、東京都の要請を受け、資材支援だけでなく、建設機械とオペレーターを派遣。人命救助とがれき処理作業がいまも続く。伊豆大島のいまをリポートする。
◇東建が物資・建機・人材支援
1時間当たり雨量120mm、連続雨量824mm--。伊豆大島の年間降雨量の半分近くが1日で降った台風26号によって、大規模な土砂災害(流木含む泥流)に見舞われた10月16日から既に2週間。同31日に訪れた伊豆大島の岡田港、大島空港から町中心部の元町地区へ向かう基幹道路の大島一周道路(都道)と、元町地区にある大島町役場までの周辺は、行き交う自衛隊車両とがれきを運ぶダンプ車を除けば、日常の風景だった。
大島一周道路を管理する、東京都大島支庁の松葉修土木課長は支庁舎目の前の大島一周道路について、「当日(16日)は午前3時に停電し、道路は流木であふれ、どこにも出られない状況だった」と振り返る。
自衛隊と民間のバックホウが活躍する |
◇一周道路
「一周道路は大島のワンウエー。道路啓開が必要不可欠」だったとし「前日から泊まり込みをしていた職員と地元建設業者が一緒に啓開を開始し、2日で片側通行にこぎ着けた」ことで島外からの支援受け入れも一気に進んだ。元町地区の一周道路から、三原山中腹へ向かう道に入ると、山の斜面崩壊による多くの流木を含んだ土石流に覆われた一帯に風景は一変する。
もともと東京都は土砂災害に備え、北から「長沢本川堆積工」「大金沢支川堆積工」「大金沢本川堆積工」「八重沢堆積工」と、土砂災害発生の可能性がある4つの沢の上部に、それぞれ砂防えん堤と流路工を整備。この4つの砂防施設が、流木と土砂流失を食い止めたものの、土石流は大金沢本川と八重沢の間を通り、海まで流れ込んだ。
取材で訪れた10月31日、最大の土石流被害を受けた大金沢本川と八重沢の間では、土石流で覆われた区域で流木などがれきを集積し搬出する自衛隊と、人命救助作業を行う東京消防庁が担当地区を分けて作業を行っていた。作業には、東京建設業協会が都の要請で派遣したグラップルとショベル、ブルドーザーなど9台が、自衛隊と消防庁のもとで稼働。そのほか地元建設企業も参加していた。東建は、建機のほか通常の土のうや1t土のう、サンドポンプ、発電機など東京都からの要請品目を随時送付している。
◇がれきは11万t
大金沢本川近くの被災現場は、自衛隊保有建機のほか、東建からの派遣建機が、大きな流木をまとめてつかんで移動できるグラップルやブルドーザー、油圧ショベルでがれきを集め、民間企業のダンプカーも交じりながら、がれきを搬出。ダンプが行き交うたびに道路に散らばった火山灰が巻き上がり、そのほこりで前が見えない状況だった。
4つの砂防えん堤を整備した都大島支庁の松葉土木課長は、「砂防施設が大きな効果を果たしたのは間違いない。今後、えん堤に溜まった流木と土砂を除去しなければならないが、土砂は泥流で水分が多く、除去には水抜きが必要」と話す。また、「支庁の管轄は、伊豆大島、利島、新島、式根島、神津島の5島あり、他島についての業務も継続的にしなければ」とも。
土砂災害で発生したがれき約11万tは、今後島外処理を予定している。
痛々しい爪痕 |
設置された土嚢 |
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