渋谷の3Dモデル |
◇渋谷再開発
「渋谷再開発をUIM実証の場にしたい」と強調するのは、建築本部建築部BIM推進グループの越前昌和グループリーダー。東京の渋谷駅周辺では2012年3月に竣工した渋谷ヒカリエに続き、駅街区、南街区、道玄坂街区の3カ所で再開発事業が具体的に動き出した。事業規模は総延べ約45万㎡にも達する。
現在は解体や基盤整備工事などが始まり、14年度から本体工事が動き出す見通し。工事区域は密接し、地下埋設物も多数存在する。プロジェクト関係者は多岐にわたり、協議や調整は広範囲に及ぶ。施工は建築と土木が密接に絡み合い、その工程調整や図面整合を明確に行うには3次元モデルデータの利活用が欠かせない。CIM担当を務める小島文寛土木本部土木技術設計部設計グループ課長代理は「渋谷を足がかりにUIMを他のプロジェクトにも展開したい」と期待を込める。
再開発のパース |
◇まちづくりにBIM
UIMに行き着いた背景には、経営理念の存在がある。ブランドメッセージ『タウン・バリューアップ・マネジメント』を掲げる同社は、街づくりの価値創出を目的に事業を展開している。そこには企画から設計、施工、さらには維持管理にまで価値を展開していく考え方が存在する。これはまさに川上から川下までを3次元モデルデータでつなぐBIMの概念に通じる。建築と土木を融合した都市モデルのUIMには、同社が追求する街づくりの価値を存分に引き出せる可能性が秘められている。 同社が土木本部にCIM担当を配置したのは12年6月。ことし7月には建築本部にBIM推進グループを発足させた。「同業他社に比べて動き出しはやや遅れをとったが、建築と土木の連携し合うUIMを掲げたことで、社内外へのインパクトは大きい」(越前氏)と考えている。
◇街の成長を記録
既に渋谷再開発では複数の工区で施工への参画が決まり、JVスポンサーの東急百貨店東横店東館・中央館解体工事では施工法の検討などに3次元モデルを積極活用し、UIMの実証を段階的にスタートさせている。社内では各現場への導入支援や、モデル活用のルール整備にも着手。現場が自主的に活用できるように、3次元データ連携の枠組みも構築する予定だ。
自主的な試みとして、国土地理院の基盤地図情報に建物の高さ情報などを入れ込み、東西に約2㎞、南北に約1.7㎞の都市モデルを構築した。小島氏は「建築と土木のモデルを連携させるには、座標点の位置まで厳密に微調整する難しさがあった」と振り返る。事業の全体完成は28年。都市モデルでは街全体がどのように成長していくかが見て取れる。そこには人の流れの変化も反映され“15年後の渋谷"が鮮明に映し出される。
同社にとって、UIMは3次元化に対する社内意識を植え付ける旗印でもある。「まずはやれるところから」と、越前氏は強調する。渋谷再開発では3次元モデルを関係者間の共有ツールとして活用する方針は決まっていないが、「チャンスがあれば積極的に提案していきたい」と考えている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
0 コメント :
コメントを投稿