2013/11/08

【現場最前線】首都動脈、京葉道路を一夜で切替え!! 通行止めなし

東日本高速道路関東支社の千葉工事事務所が進めている東京外かく環状自動車道(外環)千葉区間で、一夜にして京葉道路の下り線を切り替えるという工事が行われた。11月5日午後8時から翌朝午前5時前までの短時間で、高速道路を通行止めにすることなく、2車線を新たなルートに切り替えた。当日の工事に当たった千葉工事事務所と、施工の大成建設・戸田建設・大豊建設JVに密着した。


◇切り替え

 建設中の外環千葉区間と京葉道路の結節点となる稲荷木工区は、供用中の京葉道路直下に新たな外環道の本線躯体とランプなどを建設する。京葉道路は1日当たりの交通量が13万台もある重要路線で、通行止めができない。
 そのため、上下線6車線をいったん北側にすべてう回させて、直下に外環の函体を構築した。2012年5月に、上り線直下の函体が完成したため、1度目の切り替えを実施している。
 今回は、下り線直下の函体も完成したことから、う回させた道路をすべて戻す工事を行った。
道路切替のイメージ


◇実施本部

 5日午後6時、東関東道千葉北インターチェンジ(IC)にある千葉管理事務所に、千葉工事事務所、千葉管理事務所、大成JVなどから約50人の関係者が集合した。工事をする側と交通規制でバックアップする側との調整会議だ。ほぼ同時刻には、現場事務所で施工者の調整会議も開かれた。
 千葉管理事務所3階の会議室では、切替工事実施本部長を務める河島好弘千葉工事事務所長が「通勤・通学への影響を抑え、作業員の安全を確保すべく、各自の役割を理解し、完遂してほしい」と呼び掛けた。
 さらにチームごとのミーティングを行い、「翌朝に安全・無事に戻ってこよう」との掛け声で解散した。実施本部設置前には、全員が「カツ」の夕食でげんを担ぐという念の入れようだ。
 午後8時、現場内のハウス2階に設置された実施本部が始動した。
わずかな時間で高機能舗装を施工する


◇施工開始

 暗闇に包まれた現場内に、静かに約30台もの10tダンプが入場していく。
 交通規制によって京葉道路が1車線になると同時に、本部の無線に段取り確認が入ってくる。国内に数台しかないCMIという切削機が、アスファルト路面を30cmずつ削り取っていく。
 う回路はカーブを描いているが、切り替え後は直線となる。う回道路のバンクの分だけ、東京側と千葉側の擦り付け部は表面を大きく削らなければならない。それも、8時からの一斉スタートだ。
 高速道路だけに、その切削量は最大高さ1mに及ぶ。午後10時22分から始めた切削は、日付が変わったころに終了した。
 切削機が切り出す切削廃材は、10tダンプをほんの5分ほどで満載にする。ダンプは再生プラントとの間を往復しながら、2200m3もの廃材を処理した。
 実施本部のホワイトボードには縦軸に時間、横軸に現場の施工位置をプロットした複雑な工程表が張り出されている。その右には、監督班から時々刻々と工事報告が手書きで記入される。工事進捗の遅れは、夜明け前の規制解放に直結し、通勤通学ラッシュに大きなダメージを与える。まさに緊迫を表すボードだ。管理局サイドからも渋滞情報や苦情の報告が上がってくる。東日本高速の小暮英雄工区長は、各所からの情報をもとに、切り替えの瞬間に備えた。
 午前1時前にすべての切削が完了すると、すぐにタックコートを散布、間髪入れずにアスファルトフィニッシャーと合材を供給するダンプで舗装を始めた。マカダムローラーとタイヤローラーが転圧、あらかじめ舗装の終わっている部分の養生を解いて午前3時に舗装工事が終わった。
 施工を担当した大成JVの枌野(そげの)勝也所長は「この工事では、供用中の車線を走る車と作業員を隔てるものがない。非常に厳しい環境だが、やれることをすべてやって、腹をくくる覚悟で臨んだ」と話す。
後方の切削機が既設舗装をどんどん削る
昼間の様子。画面中央の新設直線部に左の迂回路を切り替える
実施本部に設置された「緊迫のボード」


◇交通開放

 午前3時30分、ついに「低速走行規制」が始まった。これは、現場手前の流入口から東日本高速の「黄パト」車両と警視庁のパトカーが時速15㎞で道路を抑え、同時に時速60㎞で前方の車両を追い出す。その速度差が稼ぎ出すわずかな空白時間を使って、今まで道路の左側に流していた一般車両を右側に移し替える。この規制で、通行止めせずに道路の切り替えができる。
 実施本部のメンバーは、京葉道路近くのビルの屋上に集まり、無線や電話で連絡を取りながら、下り線の交通が途切れるのを待った。
 深夜でもかなりの交通量があった京葉道路下り線が、追い出し車両が通過した瞬間から真っ暗になった。すぐに現場では、標識やコーンを、事前の打ち合わせどおりに切り替え始める。道路上には、規制車両のライトだけが見える。
 すべての切り替え作業が完了すると「作業終了、速度を上げろ!」と管理車両に連絡が告げられた。
 15㎞で走行していた抑え車両が、一斉に60㎞まで加速する。はるか遠くから、大きな光の列が現場に向けて流れ込んでくる。それは「都市の動脈」に再び血液が流れ始める瞬間だった。冷え込む屋上からメンバーたちは静かにその列を見つめた。
建物屋上から、開放された京葉道路を見下ろす本部メンバー

建設通信新聞(見本紙をお送りします!)


Related Posts:

  • 【現場最前線】「静岡モデル」の防潮堤整備 独自のCSG統合管理システムで挑む  浜松市で建設が進む静岡県の防潮堤整備事業は、既存の防災林などをかさ上げ・補強する「静岡モデル」として全国の沿岸域自治体から関心を集めている。この現場で前田建設JVは、CSG製造とCM(コンストラクション・マネジメント)業務を担う。独自のCSG統合管理システム「MAC Links(マック・リンクス)」によって品質を高めているほか、施工を担う地元企業の技術指導やマネジメントも進めた。今月中旬に現地を訪れ、前田建設JVの取り組みを取材した。 … Read More
  • 【現場最前線】「見えない屋根」の下でものづくり・人づくり 沼南調整池築造工事  P-3C型対潜哨戒機などが離着陸を繰り返す海上自衛隊下総航空基地の正面に位置する、千葉県柏市の同県水道局沼南給水場用地内で、飛島建設が調整池の築造工事を行っている。現場上空が基地滑走路の直線上にあるため、高さ制限が課せられた厳しい施工条件の下、現場を指揮する山口澄靖所長は「レーザーバリア警報システムを設置するなど作業時に制限高さを越えないよう工夫しながら、慎重に施工を進めている」と説明する。  沼南調整池築造工事は、千葉県、松戸市、野田… Read More
  • 【佐藤直良のぐるり現場探訪】「安全」に工夫こらした西日本高速 道場生野と 高槻JCT工事 今回紹介するのは、西日本高速道路会社の新名神高速道路建設現場である。「三方良しの公共事業」の提唱者で有名な奥平聖西日本高速道路取締役常務執行役員の薦めもあり、2件の現場を訪ねた。共通する特徴は「安全」だ。両現場ともに日本建設業連合会の快適職場表彰を受賞しており、現場での工夫には目を見張るものがあった。   目の前に広がる大スケールの土木構造物 ■ 道場生野工事 訪問した現場は、名神高速道路との結節点である神戸ジャンクション(… Read More
  • 【現場最前線】避難指示解除までに復旧目指せ! 福島県・常磐線室原川橋りょう工事  東鉄工業は、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、震災5年後も不通区間の常磐線竜田~原ノ町間のうち、浪江(福島県浪江町)~小高(南相馬市)間に位置する全長108mの室原川橋りょうの復旧工事を進めている。東日本旅客鉄道水戸支社が発注、現場周辺の避難指示解除が予定されている2017年春の運転再開を目指して工事を急ぐ。現場は浪江駅から北に約1.1㎞にあり、いまも居住制限区域または避難指示解除準備区域に指定されている。地域住民の避難生活が続… Read More
  • 【東鉄工業・鉄建JV】大迫力200t級パワーショベル!100t級ジャンボブレーカー! 超大型重機で橋脚解体  東鉄工業・鉄建JVが整備を進めるJR常磐線利根川橋梁改良工事が最終段階を迎えている。発注は東日本旅客鉄道(JR東日本)東京支社で、快速線と緩行線の間に新たな橋梁を築き、2014年11月には新快速線に切替が完了した。1月から旧橋脚の解体撤去作業に取り組んでいる。橋台2基、橋脚30基を解体撤去する予定で、超大型重機を組み合わせ、効率良く工事を進めている。写真はパワーショベルが橋桁上部をつかむ様子。  工事では、民家や道路が近接する橋台2基と… Read More

0 コメント :

コメントを投稿