現在、20件程度でBIMを導入 |
「BIMの前向きな意識は全国に点在している。それをつないでいく」。吉田グループ長は推進グループの目的をそう説明する。近年は施主が導入を求めるケースが目立ち始め、自らが提案する受注プロジェクトも増えてきた。まだレベル差はあるが、自発的に20件程度の稼働中プロジェクトでBIMが導入されている。
現場に3次元モデルの作成スタッフがいないため、推進グループはその支援役としても活動している。「将来的に現場が使いこなせることが理想だが、まずは推進グループを経由し、ノウハウを共有することが近道」と考えている。3年後の目標に掲げるのは3次元施工図の実現。「最初から難しいところにチャレンジするのではなく、できる部分から取り掛かる。目先の目標は社内ルールの確立だ」
導入効果として期待するのは、CSと技術力向上 |
◇試行プロジェクト
同社がBIMの導入効果として期待するのは、顧客満足度向上と技術力向上の2点。推進グループの松野義幸担当部長は「実際にBIMの効果を得るのはわれわれではない。各部署が何の目的にどう使うか。その方向性を導くことに力を注ぐ」と強調する。既に営業部門を対象とした社内セミナーを開催し、年明けには支店への説明会も計画している。「BIMとゼネコンの関係性を導き出し、その可能性を感じてもらうところから始めている」
試行プロジェクトには、S造のオフィスビル2件、RC造のマンションと老健福祉施設の計4件を位置付けた。いずれも設計施工一貫のプロジェクトだ。意匠と構造の3次元モデルを作成中のオフィスビルでは施工段階へのデータ連携を想定したフルBIMに挑戦し、RC案件では社内標準化に向けたベンチマークを抽出する。
推進グループの活動に並行し、各部署からメンバーを集めた社内ワーキンググループも発足した。そのまとめ役を務める松野担当部長は「技術力を高めたいと考える部署もあれば、最小限にとどめるべきなどの意見も出ている。BIMに対する社としてのスタンスを導き出し、来年4月からの本格運用に歩調を合わせる」と説明する。
◇属性情報は後からついてくる
現在の現場支援数は、大規模プロジェクトを中心に7、8件に達する。3次元パーツ作成に加え、鉄骨の建方や施工ステップ図関連の依頼もある。推進グループの江口正剛氏は「施工部門の底上げがBIM推進のポイントになるだけに、3次元モデルを現場教育の一環として位置付けていきたい」と前向きだ。岸田悦幸顧問も「そもそも設計力が備わっていなければBIMを有効活用することはできない。社としての総合的なレベルアップが問われる」と教育の重要性を感じている。
来年4月からの本格運用に向け、吉田グループ長は「その仕組みをつくることが先決」と考えている。設計から施工、維持管理に至るまで3次元モデルデータを一気通貫で活用することを最終目標に掲げているが、それには各段階でデータを共有できなければ意味を成さない。「BIMで重要なのは“I"の部分であり、属性情報をどう設定するかが問われる。だが、まずはデータが循環する流れをつくり出すことに力を注ぐ。Iの部分は後からついてくる。推進グループの役割はまさに、その軸をしっかり形づくることだ」
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
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