FM(ファシリティ・マネジメント)にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用する取り組みが、ゼネコンや設計事務所の間で具体化し始めている。こうした中、10月に開催された建築イベント『Archifuture2013』では、「建築主とユーザーのためのBIM」をテーマに受発注者が率直な意見を交わした。
BIMのデータベースは「宝物」にもなり得るが、生産のためだけに作成されたデータでは、必ずしも維持管理・運営には使えない。FMを研究するNTTファシリティーズ研究開発本部アドバンスドFM部門主任研究員の松岡辰郎氏は「自動車に乗るためにバルブの説明がいらないのと同じ」と明快だ。
代わりに必要となるのは、ユーザーに向けた取扱説明書だ。設計者と入居官庁の間に立つ国土交通省官庁営繕部整備課施設評価室長の吉野裕宏氏は「設計者が考えた機能を100%使えるように、BIMで説明すれば分かりやすいのではないか」と提案する。さらに第一生命保険不動産部CREファシリティグループ課長の堀雅木氏は「管理側が定点観測した上で(機能が最大限に発揮される使い方を)アジャストしていくことがFMにつながる」と発展させた。
◇クライアントニーズが課題
一方で管理側から生産側への要求は、まだ不透明だ。BIMとFMをつなぐ事例に乏しい現在では「BIMで何をやりたいかを尋ねてもユーザーには分からない」(吉野氏)ためだ。ただ、「何をテーマとして持っているかは、発注者側も明確にする必要がある」と、東京流通センター施設部技術担当部長の牧幹夫氏は話す。例えば「維持管理費を平準化したいが、収支が良くない年は修繕を棚上げにしたい」「オーナーの設備のほかに、テナントが整備した設備を次のテナントが引き継ぐ場合などに、権利関係を管理できるリーシングツールがほしい」(牧氏)という。こうしたクライアントごとに異なるニーズから「逆算」した提案が求められてくる。
BIMは、データベースであると同時に、「クライアントが何を大事にしているかを探れる」(前田建設建築事業本部企画・開発設計部BIM設計グループ長の綱川隆司氏)とともに「選択肢を示しながらバランスを図る」(安井建築設計事務所執行役員東京事務所副所長設計・監理部門総括の村松弘治氏)ためのコミュニケーションツールでもある。司会を務めたIAI日本代表理事の山下純一氏は「生産側には、目の前の建築計画だけでなく、使われていく過程まで含めたコミュニケーションが必要。発注者も意図を伝えることが重要だ」とまとめた。
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