西武ホールディングス(HD)子会社の西武プロパティーズが、東京都千代田区の旧グランドプリンスホテル赤坂跡地を開発する「(仮称)紀尾井町計画」に伴い、都指定有形文化財・旧李王家東京邸(旧グランドプリンスホテル赤坂旧館)の2段階にわたる曳家工事が大成建設の施工で順調に進んでいる。敷地東側のプリンス通りと西側の紀尾井町通りの約18mに及ぶ高低差を克服するため、建物重量約5000tという旧館を1次曳家により44m移動後、4カ月の仮置き期間内に既存位置に地下躯体を構築。2014年5月からは垂直方向に約8割戻すための2次曳家工事に着手、同年11月末には創建時の姿がお目見えする。設計・監理は日建設計で担当。
1次曳家の終盤を迎えた18日には、その“舞台裏”を報道機関に公開した。施工に当たる大成建設の小倉学作業所長を筆頭に、現在は1日約50人の作業員を動員、南東方向に約38mの移動を完了した。19日には水平方向に約30m、垂直方向に約35m、南東方向に全44mの移動を終える見込み。
小倉所長は「重量面では決して難工事とは言えないが、建物形状が長方形でなくL字型であるため、移動のバランスをとることが非常に難しい」と、この現場ならではの苦労を語る。
曳家工事の前段となる既存柱の切断に当たっては、狭小な空間に、厚さ約75cmの補強材となるマットスラブを設置。その下に仮受サンドル、ユニバーサルジャッキを設けることで、従来の柱で支えていた重量を仮受けして切断。ジャッキアップ作業では1次曳家前に22cm、最終となる2次曳家前には42cmまで完了する予定だ。
その後、仮設耐圧板、さらには置構台の上に敷かれたレール上に径60mmのコロ棒を設け、移動台車95台を設置。建物西側に15台設置した推進ジャッキを使って、1回当たり1-2秒に1mmのペースで、5-10分をかけて350mm押し進める。この動作を1日におよそ17回繰り返すことで、1日に約6mずつ移動しているという。「常に作業員30人を配備し、1押しするごとに数十分をかけて、台車の異常などを入念に点検している」(小倉所長)。
旧館を保存しつつ進める「(仮称)紀尾井町計画」では、地下2階地上36階建てのオフィス・ホテル棟と、24階建ての住宅棟の2棟総延べ約22万7200㎡規模の複合施設を建設する。オフィス・ホテル棟は鹿島・鉄建・熊谷組JV、住宅棟は西武建設・大林組・前田建設工業JVの施工で1月に着工した。16年5月の完成を目指す。設計・監理は日建設計。外装デザインはコーン・ペダーセン・フォックス(米国)が担当。総事業費は約980億円を見込む。
旧館は、宮内省内匠寮(現宮内庁管理部)が設計。清水組(現清水建設)が施工した。規模はRC一部木造2階建て塔屋付延べ約1790㎡。1955年には赤坂プリンスホテルとして開業し、83年の新館開業以降は婚礼施設やレストランなどとして親しまれてきた。西武プロパティーズによると今後は「歴史を継承し、多くの人に親しまれる建物となることを目指し、詳細を検討している」という。
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