2015/09/21

【水と土の芸術祭2015】新潟市内の「潟」テーマに土木と人の関係を紹介

新潟市内で、「水と土の芸術祭2015」が開催されている。「水と土」とは、新潟での河川土木の歴史を象徴する言葉だ。信濃川など恵み深き大河は、しばしば暴れ氾らんした。そのたびに先人たちは水や泥土と必死に闘ってきた。地方創生の機運が高まる今、芸術祭では建築などのアートを通じ、生命と財産を守り地域の発展を支えてきたインフラ整備の重要性や新潟の風土の素晴らしさを改めて伝えており、同時に土木と人の関係を見つめ直すきっかけにもなっている(敬称略)。写真はドットアーキテクツの「潟の浮橋」。

 3回目となる今回の芸術祭は、新潟市内にある大小さまざまな湖沼「潟」がテーマ。4つの潟にアート作品を展示している。単なるオブジェの制作ではなく、それぞれの潟の歴史や背景のリサーチから入って、潟と一体になり、生かし合うものを作ってもらいたいとの考えから、アーティストではなく建築家に制作を依頼した。
 県内最大の福島潟(ふくしまがた)には、建築家ユニットのドットアーキテクツ(家成俊勝、赤代武志、土井亘)の「潟の浮橋」を展示している。伝統的な「潟舟」3艘を連結して潟の中にある浮島につながる橋にした。葦を部分的に刈り込んだ浮島からは、広々とした潟の眺望がきく。

アトリエ・ワンの「佐潟なりわい観測舎」
ラムサール条約登録を境に、自然に戻りつつある佐潟(さかた)には、アトリエ・ワン(塚本由晴、貝島桃代)の「佐潟なりわい観測舎」がある。集落や砂地のスイカ畑の間を歩く道も作品の一部として考えられており、観測舎からは佐潟の動植物や人間のなりわいである漁業、ハスの収穫などが見える。

生物建築舎の藤野高志による「曲」
上堰潟(うわぜきがた)では、生物建築舎の藤野高志による「曲」を展示している。緩やかな曲線を描く白いアーチは、地元住民と潟が刻んできたゆったりした時間を表現している。水辺近くではぬかるんだ土に植物の根が絡み合い、独特の柔らかさがあるが「曲」もまた上を歩くと緩やかに波打ち、歩いた時の感触を再現する。
 鳥屋野潟(とやのがた)では、都市の明かりとともに、潟の水面を感じさせる明かりが、ぼんぼり光環境計画の角舘まさひでによって灯される。
 そのほか、「ベースキャンプ」と呼ばれる旧二葉中学校では、建築家が制作したアート作品3点を展示している。岡昇平、徳本賢洛による駐車場からの「アプローチ」では、水と土が育む植物による、日陰のトンネルを作った。

丸山美紀、長谷川明の「新ガタログ」
丸山美紀、長谷川明による「新ガタログ」は旧二葉中で使っていた棚や用具などを架空の新潟民具に加工している。
 倉方俊輔による「仏壇バラバラ観測」は、新潟の工芸品である「新潟仏壇」を分解し、その建築性を観察する試み。
 新潟市内のアトリウム(中央区西堀通6-866)には、中国の建築家、シャオ・シャオの作品「An Object from the Mountain」を設置している。山(土)から海(水)へと流れる丸太をイメージした形状で、芸術祭のインフォメーションブースになっている。
 このほかにも多数の作品や、市民、作家によるイベントが用意され、新潟市内は大いに盛り上がりを見せている。10月12日に閉幕するが、これは潟に飛来する渡り鳥を驚かさないようにという住民の配慮からだ。
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