2015/03/07

【現場最前線】上空と地上の精密連携! 国内最大の風力発電設備に60mのブレード設置

島国であり、かつエネルギー資源の乏しい日本にあって、風力発電への期待は大きい。出力の大きい風力発電の開発が進む中、日立製作所は茨城県神栖市で国内最大規模となる5メガワットの発電システムの完成を目指している。東光電気工事が担当する建設工事では、一辺長さ約60mに及ぶブレード3枚の取り付けが完了。同社の馬田榮社長も見守る中、無事作業を進めた。岡野雅史現場代理人は「上空は強風が吹く中、柱の上にいる作業員と地上の作業員で精密な調整が必要」と話し、集中して作業に当たった。

 設備は、鹿島港内にある深芝公共埠頭内の県有地に建設。国内の風力発電はこれまで出力2メガワットの規模が多く、5メガワットは現状で最大クラスになる。設備は洋上風力発電の実証も兼ねている。洋上風力の場合、陸上と比較すると建設コストが高い上、保守が難しい。このため、1基当たりの出力を大きくして効率性を高めるほか、厳しい自然環境にも強いシステムが求められている。
 今回設置する設備は、日立製作所が2012年から開発に着手していた「HTW5.0-126」。風力発電設備はタワー(支柱)、ナセル(発電部)、ブレード(羽根)などで構成されており、出力を拡大するために各部材も大型化している。2メガワットの設備ではタワーの高さ、ブレードの直径はそれぞれ80mほどだが、今回はタワー高さが90m、ブレードの直径が126mとなる。年間で10個を超える台風が襲来するなど厳しい気象条件に耐えるよう、ブレードの設置位置を風下にする「ダウンウインド方式」を採用。暴風時に横風を受けない向きを保持し、風荷重を低減できるようにしている。
 建設工事でも、大型化に対応したものとなった。タワーの上部に設置するナセルは300tあり「日本で数少ない1200tクレーンを活用して設置したほか、組み立てるために必要となったトレーラーも50台に及んだ」(同社)という。

設置を待つ2枚目のブレード
そして2月初旬には、3枚のブレードをナセルの先端にあるハブに1週間かけて設置した。1枚目のブレードは午前中にクレーンでつり上げ、昼過ぎにはハブの高さまで到達した。位置を水平に保つため、4台の装置でブレードを支えて設置作業に入るが「むしろこれからの作業の方が長い」と岡野代理人は気を引き締める。
 ブレードを正確に接続させるため、4人の作業員が上空の接続部に待機。地上でブレードの位置を操作するクレーンの作業員と息を合わせ、設置作業を進めなければならない。
 作業の障壁は上空の風だ。関東地方は冬季に冬型の季節風が吹くことで有名だが、当日は移動性高気圧に覆われたこともあり、風が強い沿岸部でも地上で感じる風は穏やかだった。それでも岡野代理人が「上空は7mほどの風が吹いている。これでも設置にはぎりぎりの風速」と話すように神経をすり減らす作業が求められた。

馬田社長(右から4人目)らに説明する岡野代理人(右から6人目)
1枚目の設置は、馬田社長ら同社幹部も視察に訪れる中で施工した。岡野代理人の説明のもと、作業を見守った馬田社長は「これまでも風力発電設備の施工を手掛けている。今後も、風力発電に貢献できるようにしたい」と、風力発電設備の建設に関するノウハウを積み上げ、事業を強化したい姿勢を示した。
 今後は年度内に工事を終え、運転開始を目指したい考え。日立製作所は洋上風力発電の導入拡大に向け、システムの高度化や信頼性向上に向けた実証を進める。
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