2015/04/03

【現場から】首都高の手すりからわずか2.6m 大豊建設のマンション工事

東京都品川区で、世界初のマンション向けエネファームを導入する共同住宅「(仮称)ブランズシティ品川勝島計画新築工事」が大豊建設の施工により進められている=写真。敷地の西側は首都高羽田1号線、東側は東京モノレールに近接するという厳しい環境下で、円滑な施工へ不断の取り組みを展開している。
 同施設は東急不動産が発注し、日建ハウジングシステムが設計を担当。356戸からなり、都市ガスで電気と温水を一緒に作り出す「エネファーム」を全戸に採用。各戸当たりCO2は約49%、年間ランニングコストは約4万8000円削減できるという。共用部には太陽光発電、定量型蓄電池、カーシェア用電気自動車を連携するマルチパワコンシステムをマンションで初導入し、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)/MEMS(マンション・エネルギー・マネジメント・システム)で効率的に電力を使用できる。東京都から低炭素建築物に認定されている。
 現場の西側は首都高羽田1号線、東側は東京モノレールに囲まれている。その距離は、首都高の手すりから足場まで2.6m、モノレールから9mと大豊建設の石川守所長が「こんなに近接した現場は初めて」と語るほど。施工には万全の態勢で臨んでいるが、特に「1階、2階のクレーン作業が一番気を遣った」という。作業にあたっては監視員を配置。モノレールが近づいたら笛で合図し、通過する間はモノレール側のクレーン作業を行わないよう徹底した。また地下工事中は首都高の橋脚を毎日計測し、傾きがないかを確認した。
 施工省力化のため、基礎には鋼製型枠を採用。また基礎の配筋は溶接2線メッシュ工法で、工場で先組みした配筋をクレーンで並べた。柱筋については現場の敷地の上で地組みし、クレーンでおろすという方法をとっている。これは「職人を平準化する意味で役に立った」と語る。
 また床版にはハーフPCaを採用。設計段階では予定になかった廊下部分についても、作業員の省人力化を図るために採用した。壁面にはALCを採用し、型枠工と鉄筋工の手間を低減。軽量な素材なので柱、梁の負担を少なくする効果もあるという。
 現在の進捗率は53.6%。石川所長は9月中の工事完了へ向け「作業は安全が第一。現段階で大きな災害もなく、竣工まで何が何でも事故を出さない、という気持ちで作業に当たっていく。このマンションを購入するお客さんに、良かったと思ってもらえるものをつくれれば」と意気込みを語る。
 規模はRC一部S造地下1階地上18階建て延べ3万6381㎡。建設地は勝島1-1-54で敷地面積7957㎡。京浜急行本線鮫洲駅、りんかい線品川シーサイド駅、東京モノレール大井競馬場前駅が徒歩圏となる。

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